表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

2.村人A、薪割りで大人を超える

 広場の一角に並べられた丸太を見て、俺は内心でため息をついた。


「これを全部割るのか……?」


 薪割りは村の重要な仕事の一つらしい。焚き火や料理に使う燃料を確保するため、男たちは毎日この作業をしている。


「レイン、大丈夫か? 最初は無理しなくていいからな」


 そう声をかけてきたのは、俺を迎え入れてくれた中年の男性、グラムだった。


「はい、頑張ります!」


 俺は元気よく返事をし、斧を手に取った。


 しかし、そこで気づいた。斧が妙に軽い。いや、それだけじゃない。手の感覚がすでに斧の重心やバランスを完璧に把握していた。


(ああ……これもスキルか)


 俺は「武器操作」「筋力増強」「器用さ向上」など、ありとあらゆるスキルを持っている。つまり、薪割りの動作一つとっても最適解を導き出せるのだ。


(とはいえ、あまり目立つのは良くない……)


 俺は慎重に、一回目はゆっくりと斧を振り下ろした。


 バコーン!


 乾いた音が響き、丸太が綺麗に二つに割れる。周囲の村人たちが驚いたように俺を見た。


「おおっ!? なかなか筋がいいじゃねえか!」


「お前、本当に薪割り初めてか?」


 大人たちが感心したように言う。俺は少し焦ったが、平静を装いながら笑う。


「えっと……コツが分かった気がします!」


 そう言って、次の丸太をセットする。今度は少しだけ力加減を調整して、わざと手こずるようにした。


 だが——


 バキン!


 またしても、一撃で丸太が真っ二つになった。


「……おいおい、まぐれじゃなさそうだぞ?」


「なんて腕力してんだ、レイン……!」


 しまった。さすがに目立ちすぎたか?


 けれど、薪割りの感覚があまりにも自然すぎて、どうしても力の調整が難しい。俺の身体は既に最適な薪割りの方法を理解しており、それを無意識のうちに実践してしまうのだ。


「レイン、ちょっと貸してみろ」


 そう言って、大柄な村人の一人が俺の斧を借りて丸太に挑んだ。彼は渾身の力を込めて斧を振り下ろす。


 ドスッ!


 丸太には深く刃が食い込んだが、真っ二つには割れなかった。


「なっ……!」


 周囲の村人たちがざわめく。


「お前……本当に十歳か?」


「いやいや、いくらなんでもすげぇぞ」


 俺はどう誤魔化そうか考えながら、必死に笑顔を作った。


「えっと……体が軽いから、勢いがつきやすいんじゃないですかね?」


「そういうもんなのか……?」


 どうにか納得してもらえたようだったが、内心ヒヤヒヤだった。


(やっぱり、手加減しないとまずいな……)


 こうして、俺の「村人A」生活は、思わぬ形で注目を集めることになったのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作出しました! https://ncode.syosetu.com/n8707kc/ よければこちらもお読みください https://ncode.syosetu.com/n1101kc/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ