終わりの始まり
クラスメートは全員人間じゃない。そう気づくのに時間はかからなかった。
じゃあ俺も人間じゃないのか?
そう思ったが、俺は正真正銘の人間だ。
昨日父さんに
「俺って人間?」
って聞いたら
「は?」
と言われてしまった。まぁ、それが普通のリアクションだよな。
とまあ、紅蓮は吸血鬼と判明した翌日、俺は気づいてしまったんだ。
俺のクラスだけ、人間が(俺以外)一人もいない。
俺はよく「大人びている」と言われるから、ワンチャン前世の記憶があるのかもしれない。
その点においては俺も人外か?
話を戻して、この白霞中は、全学年5クラスある。少ないか多いかよく分からないクラス数だが、俺たち1-2組以外のクラスは、全員が人間だ。まぁ、それが普通なんだが。
なぜ俺のクラスだけ人外?いやその前に、なぜ俺だけ人間?
俺の常識がおかしいのか?
…人外だと気づいてしまったのには、理由があるんだ。
昨日の放課後、紅蓮の口元を見てしまったのもそうだが、今日は違う。
HR、担任が健康観察をする際、名前を呼ぶ。
「天使族、天音 聖羅」
「はい」
…は?
まぁこんな感じで健康観察は進んでいった。おかしくないか?
名前の前に、種族名をつけて呼ぶなんて。ツッコむべきところはそこではないが。
ちなみに、俺が呼ばれたときは、普通に「煌閃 颯斗」だったんだよな…。
「お前、寝てたんだよ」
「ちげーし」
他クラスの友人に今までのことを話したが、まったく信じてもらえなかった。
そりゃそうだよな…。俺だってそんな話聞いたらデマだと思う。
まさか、マジで俺も人間じゃないとか…⁉
…いや、それは絶対にありえない。断言しよう‼‼‼
だって俺だけ普通に名前呼ばれたし‼‼
「はぁ…」
「ため息ついてどうしたんだよ」
「うおっ、びっくりした…。狂夜か。」
「よっ」
稲荷 狂夜。なんとこいつは、稲幽神という稲荷の神だ。
稲荷の神なんて聞いたこともないが。
「で、どうしたんだよ」
「いや…なんで俺だけ人間なんだと思って…」
「は?お前は人間じゃないだろ」
「は?」
「は?」
…マジかよ。どういうことだ?
「まさかお前、知らないのか?」
「え?何が」
「…本当に知らないみたいだな。よし、俺が教えてやるよ!」
「マジで何が?」
もう意味が分からん。
「いいか、まず人間にも種類があるんだ。」
「人間にも種類だと?俺らはみんなホモサピエンスだとかなんとか偉い人間が言うじゃないか」
「まぁそれはそうなんだが、よく聞けよ。
まず、人間の約90%がホモサピエンス…普通の、変哲もない人間だ。」
「すごく眠くなりそうな予感がする」
「そして残りの10%は、人間は人間でも様々な能力を持っているんだ。
その10%には、六つの種類がある。」
「はぁ…。」
「おい聞いてるか?」
正直半信半疑で聞いている。
「例えば感覚派。」
「らせ?」
「まぁ、聞いとけ。
感覚派は、常人よりも五感が優れているんだ。」
「例えば?」
「彼らは、常人には見えないもの、聞こえない音を感知することができるんだ。
このおかげで、隠れたものや危険を察知したりできるのさ。」
「じゃあ俺は、その感覚派なのか?」
俺別に幽霊とか見えないのだが。
「いや違う。お前はきっと、その10%の中でも数少ない元素派だろうな。」
「エルカリア…」
「そうだ。」
俺がその元素派…?まさか。
「仮に俺が元素派だとして、その証拠はあるのか?てかなんでわかったんだ?」
「元素派は、それぞれ『火・水・風・土』の物質をコントロールして、自由自在に操ることができるんだ。元素派の容姿は皆、赤に近い髪の色、透き通る肌、片隻眼を持って生まれてくる。」
「…」
確かに俺は片隻眼だ。今はカラコンで隠している、緑に近い色の右目。
「まるでファンタジーだ。でも、俺はそんな力使えない」
「そりゃあな。まだ儀式をしてないから、覚醒してないだけだ」
「さっきから変な単語を連発しないでくれ」
謎は解けた。きっと俺は、元素派だという事実があってこのクラスに編入されたのだろう。これで俺は、「普通」の領域を超えてしまった。
「さぁ、これで疑問は解決した?」
「あぁ。ありがとな」
「学級委員ですから」
「あともう一つだけ」
「俺が人間の元素派だとして、なぜこのクラスは全員人間じゃないんだ?」
「なんだ、そんなことか。」
「そんなこと?」
「このクラスは、能力者を育成するための特別学級さ」
あなたも