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【9】焼肉

 においが気になって、辺りを改めてキョロキョロと見回すと・・・うん?

 目の端に、ほんの少しだけ…明かりがさしたような気がした。


 恐る恐る、近づいてみる。


 ……なんだ、暗幕があるじゃないか。

 …ジュウジュウという、肉を焼いている音が聞こえる。


 そっと分厚い布に手をのばし、ほんの少しだけつまんで中をのぞくと…、誰かが一人でうまそうな肉を焼いているのが見えた。この位置からは、斜め後方しか見えないので、顔を確認することはできない。


 とりあえず、右目だけで部屋の中を見渡してみる。

 かなり広めの…事務所っぽい部屋のようだ。一部工事中のようで、トラ柵や三角コーンが置かれている。


 テーブルがやや斜め方向に四つ、規則的に配置されている。

 テーブルの間は通路っぽくなっており、焼肉をしている人物の向こうの壁に…少し隙間の開いた扉が見える。もしかしたら…出口につながっているのかもしれない。

 扉に行くには、食事中の人の前を通らねばならないようだ…。


 …こんなところで焼肉?

 一人で?


 怪しさがどんどん増してゆく。


 テーブルの上には、つやつやとした肉がこんもりと盛られている。

 足元には、なにやら紙くずのようなものが…ガムの包み紙?こってりしたものを食べた口直しでもしているのだろうか。


 なんといって声をかけようか、それとも無視して通り抜けようか…色々と考えていると、怪しい人物が一瞬、後ろを振り向いた。


 その、顔は…、か、顔がっ!!!


 平々凡々とした背格好に平々凡々とした顔がついていると思った俺は、叫びだしたくなるのを必死でこらえた。


 なんと、顔がなかったのである!!


 のっぺらぼうか?…にしては、口が付いているな。

 アレは確か、目も鼻も口もないやつで、貧弱でよわっちいやつだったはず…。


 暗幕の位置を移動して、化け物を観察する。

 もぐもぐしている口元はニコニコとしているが、明らかに異質だ。牙のようなものはなく、口の周りに汚れもついていなくて、食べ方自体は粗暴というよりは上品寄りに見えないでもない。よくよく見れば…一見顔が無いように思えるものの、表面が隆起していてうっすらと人の名残?のようなものが窺える。


 ……見たところ貧弱な体型だし、いざとなったらぶちのめすか。

 椅子もあるし、勝てるだろ。


 俺は足音をひそめて、卑しく肉を喰らう化け物に近づいた。



 →→→ 【8】扉



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