【8】扉
…明らかにやばいやつが、いる。
なにやら意味深に口元をモグモグしている…おかしな男。
表情はわからないが、やや小柄な同世代の男であることと、ごく普通の人間っぽい顔の造形をしていることだけは…わかる。
一体何を食べているのだろう…?
そんなことを思いながら、注意を払いつつ、一歩ずつ近づく。
ぎりぎり手が届かないくらいの距離に近づいた時、男がゴクンと…のどを鳴らした。
口に入っていたのは…ガムではなかったらしい。
嚥下音というのは、こんなにも…大きく聞こえるものなのか?
ますます大きくなる、違和感と、……危機感。
視線をまっすぐと通路の先に延ばしながら、目の端でおかしな男と扉を捉えておく。
……声をかけてきたら対応してやろう。
かけてこなければ、急襲をかけてやる。
とりあえず、扉があることは確認できているのだ。
化け物を何とかすれば…おそらく道はひらけるはず。
やれる、俺なら、確実に。
殺る、俺は、確実に。
あとはいつ、ぶち殺しにかかるか……それだけだ。
にちゃっという、粘っこい音が。
わずかに聞こえた、その時には。
俺は、全身を…ぐぼっ……。