【11】遭遇
……ダメだ、これは、見てはいけないもの。
野生の感?
魂の叫び?
幾度となく悪運に助けられてピンチを乗り越えてきた、自分の自分たる自分自分した何かが、蓋を開けることを拒んでいる。
そっとその場を離れ、男性のもとに向かった。
「人というものは…好奇心が騒ぎ出しがちな生き物でね。見たいもの、見てはいけないモノ、見たくなるもの、見てしまったもの、見せられたモノ…色んなものに遭遇して、つど選択をするんだよ」
そんなふうに言うという事は、きっとこの男性は人ではないのだろう。
「選ばなければいけない時、悩む人もいれば悩まない人もいる。雰囲気に流されてしまう人もいるし、頑なに自分の信念を貫くものもいる」
今まで、あんまり悩まないで選択をしてきたように思う。
俺は、めんどくさいことは適当に流して、その場のノリで何とかなるもんだと思って生きてきた。
……きっと今のこの状況は、自分が流されておちゃらけてしでかした結果なのだ。
「…流されることはよくあることだけれど、流されてはいけないときというのはあるんだよ。信念を貫くのはいいことかもしれないけれど、誰かの意見を聞いて立ち止まることも悪くない事だしね」
これは…説教なのだろうか。
なんとなく、親にくどくどとお小言をもらっていた頃を思い出す。
説教をする側になったから忘れていたけど、説教を受けている時って…そうだ、こんな感じだった。
正論過ぎて言い返せない、自分の落ち度を突きつけられて、聞くしかない状況で…逆切れなんてとてもできないし、早く終わってくれないかなと必死で願っているうちに何を怒られているのかわからなくなって…、いや、マズい!!今は余計な事を考えるな!!
「悩むことと、あきらめることを、はき違えないようにね。迷いを断ち切って、まっすぐ進めば…きっと自分の道を進んで行けるはずだよ。…どうだろう、何か…得るものはあったかな?」
そうだな…自分がやらかしがちだってことは、気が付けた。
もし、ココから抜け出すことができたなら、俺は慎重に生きて行こう。
「ありがとうございました。自分が落ち着きのない考えの足りない人間であることをきづけました。感謝します。もしここから出ることができたら、きっと…」
「……ここから出たいと願うのであれば、この扉の向こうにある道をずっと…ずーっと進むといいかな。まっすぐ突き進めば、あなたの世界に戻る事ができるはず……」
やった!!!
ここから出られそうだぞ!!!
思わず笑顔を向けると、何やら男性の顔色が…怒っているのか、困っているのか、呆れているのか…何か言いたそうだ。
「その…、できるはずというのは…」
「いえね、私はもう少しあなたに説教をしたいと思ってね。少々のぞかせてもらったら、あまりにもこう…未熟なところが見えたから。あんまりおせっかいをしてもマズいんだけど、どうも生来のくせというか…うーん、君ねえ、ちょっとやりすぎ。ホントそんなんでよく46歳まで生きてこれたね?どれだけ怨み買ってるかわかる?!せっかくの徳がボロンボロン落っこちててマジでイラつくわ!!そもそもね……」
なんだ?!この…豹変っぷりは?!
~選択してください~
「まっすぐ進んでみます、ありがとうございました!」 →→→ 【6】脱出
「もっと叱ってください、ありがとうございます!」 →→→ 【13】説教
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