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高校1年の時の話

作者: めちま

高校で最初のイベントがこれでした。

 高1の時、入学して早くも1か月で気の合う友人が数人できた。

 共通のバンドが好きで、ギター趣味から話が弾んだのだが、その内の一人が登校中、道路脇にあった排水口の蓋の上に自転車の前輪が乗った時に滑ってしまい、倒れた場所が悪くてそのまま道路の縁石に強かに頭を打ってしまったらしい。

 そのまま気絶して救急搬送されたのだが、脳内出血は見られるものの安静にしていれば大丈夫だとの事で俺達はホッとした。

 そして、脳内出血も投薬治療で1週間後には経過観察も終えて退院するという事になった。

 そこで担任教師が、退院する前日にお見舞いと今後の予定表をついでに渡しに行ってくれと言うのだった。

 仲の良かった数名で病院に向かったのだが、俺はその病院に初めてその時行った。

 田舎者だった俺にはその病院がやたら大きく見えたのだが、総合病院なのだから当然町の小さな診療所とは訳が違った。

 受付のロビーで入院患者の名前を告げてどこの階の何号室か教えられたのだが、その部屋に向かうまで右往左往する事になった。

 エレベーターを間違えて違う棟に向かってしまい、救急搬送されて来た事故直後の全身大やけどを負ったおっさんなんかがストレッチャーで運ばれてきたりするのを見て、俺達は驚いたりしながらも何だかんだで目的の部屋にまでたどり着いたが、その場には誰もいない。

 既に友人は数時間前に退院したという事を看護婦さんから聞いた。

 状態が悪くないので前倒しで退院したらしいとの事だったが、寝耳に水で困ったなあと思っていたら、後日親御さんが入院費用を払いに来る時に渡す物があれば渡しておきますと看護婦さんが言ってくれたので、それに甘えさせてもらう事にした。

 それで用事は済んだのだが、暇になったので皆で病院内を探索しようという事になった。

 病棟の高い所にエレベーターで昇ってみたり、或いは全然別の病棟に行ってみたり、最終的には一般病棟の大部屋なんかがある所にまで出てきたのだが、その際に大部屋の病室のある廊下を歩いてたらちょっと騒がしい。


「あれ?ポロリしてない?」


 そんな声が聞こえてきて、高校1年の多感な時期にポロリと聞いて何かを期待してしまうのは男の子なら仕方ない事ではあるものの、俺は何だろうと思いそちらを見てみると別にそれらしい状況がある訳ではなかった。

 だが、頭に包帯を巻いた中年のおっさんが何やら紐をくるくる回しているのが遠目に見えたのだが、気になって俺はそちらに歩みを進めると一瞬目を疑った。


「あ・・・え・・・んんっ!?」


 なんとそのおっさん、腹から紐が出ていると思ったらどんどん引っ張り出してしまうのだが、それはどう見ても腸だった。

 他の人も気付いたみたいですぐに看護婦さんを呼ぶ。

 辺りは騒然として、俺はその場で動けなくなったのだが、おっさんを止めに入る看護婦さんは


「ああ!何やってるんですか!?」


 と言って二人ほど看護婦さんが取り押さえようとするのだが、絶叫しながらおっさんは自分の腹に手を突っ込んでどんどん腸を引っ張り出してしまう。

 そのやり取りはそれほど長い時間ではなかったものの、俺は気持ち悪くて吐きそうになった。

 それを一緒に来ていた奴らはたまたま見ていなかったのだが、俺がその話をすると


「まじか!?やべーな!」


 とか言って笑ってたが、俺は嫌なものを見て笑える状況じゃなかった。

 他の廊下にいた患者達も何があったのか看護婦さんに聞いていたので、俺もその場で聞き耳を立てていたのだが、そのおっさんは結構酷い事故であったものの、頭を相当強く打っていたらしく、同時に手術で裂けた腹を縫合してあるのだが、それを自分で縫合した患部を指で裂いて腸を出してしまったとの事だった。

 しかも看護婦さんが言うには、意識が戻ってからおかしいので様子を見ていたが、突然そうなってしまったようだとの事だった。

 偶然俺はそれを目の当たりにしたのだったが、精神的に結構ダメージを負った。

 なので、一緒に来た数人と共に病院を出てから、その様子を話しながら駅に向かった。


「そんな事してたら死んじまうだろ?」


 そんな風に誰かが言ったが、それを聞いた皆が笑うが俺は到底笑う気にはなれなかった。

 あの時、自分の腸を引っ張り出してしまっていたおっさんの顔を鮮明に今でも覚えているが、最早生気の無い顔と言うのだろうか、半分死人のような顔をしていたおっさんの表情を思い出すと、本当に死ぬんだろうなあと思いながらも、駅でそれぞれの家路に向かう電車に乗るため、俺は皆とそこで別れて帰路についた。

 夜になって寝床に入るも、あまり良く眠れず結局朝まで寝付けないでいたが、そのまま登校すると退院してきた奴が既に着席してた。


「おはよう!昨日は悪かったっけね、入れ違いになったみたいだね!」


 そんな感じで朝から元気だったので


「おー、おはよう、もうすっかり元気やね?」


 そう言うとほどなくして、昨日一緒に病院に行った数人も登校してくるので挨拶もそこそこに、昨日の話をしてやれと言われたので、俺はおっさんが腸を自分で出してしまっていたのを見たと話した。

 すると入院していた奴は


「病院に支払いに行く際に世話になった看護婦さんに挨拶に行くから、ちょっとその話を聞いてみるね」


 と言うのだった。

 そしてその日は何事も無く終り、次の日入院してた奴は明らかに表情が暗かった。

 朝の挨拶もそこそこに、昨日病院で支払いに行った際に腸を引っ張り出してたおっさんの話聞いたか問うと開口一番こういった。


「死んだってさ」


 俺は別段驚く事も無かった。


「ああやっぱりか、そんな気がしてたんだ……」


 俺がそう言うと


「退院した後にそんな事があるとはなあ……」


 と言って入院していた奴は驚いていたようだったが、俺はそれを聞いて止せばいいのに


「そのおっさん腸引きずり出して死んでたの?」


 と聞くと違うと言う。


「頭を壁に打ち付けて死んでたらしい」


 入院してた奴はそう言うので、俺はおっさんが自分で頭を壁に打ち付けたんだろうなと思ったのだが、どうやら少々違うらしい。

 おっさんは自分で腹を裂いて腸を引きずり出してしまった一件以来、すぐに看護婦に病室に戻されてからベッドで寝たきりになってしまってそのままだったらしい。

 誰もおっさんがベッドから移動した所を見てもいないし、看護婦さんも同じ大部屋の他の患者達もおっさんが移動した所を見てないらしい。


「じゃあ夜に皆寝ている間に壁に頭を打ち付けたのでは?」


 と俺が聞くと


「就寝時間前に意識が無くなってそのまま死んだらしい」


 と入院していた奴が言うのだった。

 色々訳が分からないが俺はそれ以上この件を話す事も考える事も止めた。

 とにかく、どの時点で壁に頭を打ったのかさっぱり分からないが、死んだ事だけは確かだった。

 もしかして、看護婦さんがおっさんを取り押さえる時に頭を床に打ち付けたか?などと思ったりもしたが、俺には知る由も無い事だった。

入院していた奴は頭が良く勉強ができ、その後海外留学して高校を1年留年したのですが、国立大学に行ってから語学を生かして企業で通訳の仕事をしているらしいと風の噂で聞きましたが、彼に絡む怪談があるんですが、ちょっと長いのでそれはまた別の機会に。


書き忘れたので追記

頭を壁に打ち付けたと言うのは、あくまでもそのようだと言うだけで、実際のところはどうだったのか詳しい事は結局分からず終いです。

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