前編
今日もTwitterで呟く私には秘密の事がある。それは百合であるという事だ。でもそれは秘密なのです。だけど百合漫画、小説の話はしたい。なので自らは百合とは公言せずTwitterを楽しんでいた。
「あー、この百合小説いいよねー。」
「この百合漫画も読んでほしいなー。」
などと今日も沢山の百合好きさん達と話していました。私の名前は葉桜しほ。社会人2年目の百合オタです。おしゃれには興味はない。給料のほとんどは百合本に費やしていた。恋なんかも興味はない……私の恋愛対象は同性だからだ。実らない恋をするくらいなら全て百合本に費やした方がいいのだから。
「葉桜またミスしてるよ!」
「すいません!すぐやり直します!」
昼間は普通の社会人……いや……かなりミスの多いダメダメ社会人です。
「全く、何度同じ事を言えば気が済むのかな?」
「うぅ……ごめんなさい。」
先程から私にお説教してくるのは2つ年上の先輩。清水恵美先輩だ。
「全く君は私を怒らせて楽しんでるの?」
「そんな事は……」
「じゃあなんで毎日ミスばかりするのかな?」
「ごめんなさい……」
優しく言ってはいるけど圧が凄い……しかも美人さんだから怒ると顔が怖い……だけどこんな私をしっかり指導してくれて頼りになる先輩に私は憧れている。
「ほら、また間違えてるわよ!」
「あわわ!ご、ごめんなさい!」
こんな感じで毎日先輩に怒られる私。仲良くなりたいけど今のままでは無理と分かっている。その自分へのストレスを女の子同士の恋を見て浄化しているのです。
「さて、今日も話しますか!」
私は長い髪をサイドに纏めてサイドテールにし、眼鏡をかけた。スマホの見過ぎで視力が落ちてしまったが後悔はしていない!たぶん……
「おっ、同志達が沢山いる……って今日金曜日じゃん。」
残り物を食べながらスペースを聞いていてうんうんと共感する私。そして金曜日なので少しお酒も飲んでいた。そうして酔いも回ってきたところで私もスペースに参加した。
「こんばんは〜」
「あっ、ほしさんこんばんはー」
「お疲れ様です。」
「は〜いおちゅかれしゃまです〜」
「ほしさん酔ってますねー」
ほしとは私のアカウント名だ。ただ名前を逆にしただけの安直なものだが……
私はゆり仲間にそこそこの挨拶をする。参加はいろいろで聞くだけの人もいる。そんな人たちのコメントにも挨拶をしてまわる。
『こんばんはほしさん♪今日もよろしく』
『こんばんはです♪』
こんな感じで文章だけの人もいるので挨拶をして行く。そして深夜に近づくにつれ話は現実での恋の話に……
「でもさ、漫画や小説みたいな百合恋ってしたいよね?」
「えっ?ほしさんって百合なんですか?今までノーマルって聞いてたのに。」
「へへへ。実は百合なのです。お酒入ってるので暴露します。」
「おおー、同士じゃん!良かったら私と付き合わない?」
「うーんしらこさんはなー会った事ないもんなー会った事ない人とは付き合えないなー怖いもん。」
「ガード堅いなー」
「でも、ほしさんはなんか百合っぽさあったよね。」
「そぉー?無自覚に百合覇を出してたのかもー」
そうやってケラケラと笑っているとコメントが来ていた。
『ほしさん私と付き合って下さい。』
「おっ、ほしさん人気だねー告白来てるよー」
「やーだよーくじらさんも会った事ないもん。優しくて好きだけどねー会ってちゃんと女子かを確認してからねー」
するとくじらさんが会話に参加してくる。
「ほしさん。この声分かりますか?」
「ふぇ……?」
酔ってた私は一瞬先輩かと思った。だけどそんなはずないので変な声が出てしまう。
「ほしさん酔ってたわね。聞こえてるかしら?」
「……しぇんぱい?」
「そうだよ?大丈夫か?相当酔ってる様だが?」
「……ええええ⁉︎せ、先輩⁉︎なんで先輩がここに⁉︎」
「そんな事はどうでもいい。君が好きだ!付き合ってほしい!」
「えええええーー!きゅ、急に⁉︎」
いきなり、しかもTwitterで沢山の百合好きさん達の前での告白。とにかく色々ありすぎて頭の中が混乱してしまった私は……
「あ、あの……とりあえず先輩の家に行ってもよろしいですか?」
「君お酒飲んでるだろう。こちらから向かうよ。」
「ええええー!い、今散らかってるんですけどー!」
「ならば片付けておいてくれ。」
そう言うと先輩はスペースから抜けてしまった。コメント欄はもの凄い勢いで荒れていた。
『えっ、ガチの百合告白⁉︎』
『ほしさんチャンスですよー』
『キャーー』
『はぁ〜尊いわ……』
「え、えーっとみなさんまた明日!明日詳細は説明します!なので今日はさよならです!今から大掃除します!」
私はスペースから抜けて急いで部屋の掃除をするのだった。
後編はまた出来上がり次第投稿するのでお楽しみ!
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