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プロローグ
王城の回廊を、真新しい深緑の軍服に身を包んだ若い女性が三人歩いている。
精緻な彫刻が施された柱廊から差し込む光は、柔らかく彼女達を包んでいるように見えるが、取り巻く人々の視線は、概ね冷ややかだ。
先頭を歩く女性は、背中まで届く、癖のある黒髪を一つに束ね、切れ長の瞳は意志の強さを感じさせた。
彼女は、異境の民だった。この国では、いや、どの国でも、異境の民が登用された前例はない。それゆえ、王城に伺候する人々からは、異物を見るような眼差しを向けられていた。
それを気にする様子もなく、堂々とした足取りで歩を進め、謁見の間の扉の前で立ち止まる。
一つ、深呼吸をする。
その顔に、臆する様子はない。
張り詰めた空気を纏い、まっすぐに前を見据え、その時が来るのを待つ。
名前が呼ばれ、扉が開かれた。
さあ、踏み出そう。