92.全員行けます!
私はまず、全ての日記を探すついでに散らかった書類を元に戻す。
「……たぶんこれで全部かな」
これ、持ち帰って読みたいな。……よし!
私はフーリン様が来ていることを確認し、交渉する。
「フーリン様、リリー、こちら持ち帰っても良いですか?」
「あまり仕事の類を持ち帰るのはよくないですが」
フーリン様とリリーはぱらぱらと内容を確認している。
「大丈夫ですよ、個人的なものだと思われますので」
「こちらも問題ないですけど、その、マードリアはこういうのがある場合は忘れないようにしてください」
「大丈夫です! ないので!」
「そうですか。どうぞ。家で読んでください」
「もちろんです!」
やったー! 続きが読める!
「あ、そうだフーリン様、昨日決まったことなのですが、今度みんなの予定が合う時に海に行こうと話したのです。アイリーン様の別邸がありますし」
「海ですか、良いですね」
フーリン様はしばらくすると、笑顔が強張った。
「あの、もしかしてカーター様も?」
「誘わないと拗ねてしまうので」
「安心してくださいフーリン皇子様。兄上もいらっしゃるので」
いつの間にかアイリーン様が背後に立っていた。心臓に悪い。
「アイリーン様、おはようございます」
「おはよう。父上からの許可もいただいたから、あとは日程を決めるだけよ」
「良かったです! ダミアも行けるって?」
「予定空けとくそうです」
「なら良かった。昨日お兄様に予定聞いてきたから、これを参考にみんなで予定を決めよう」
「それもいいですけど、まずは仕事をしないといけませんよ、マードリア」
「あ、はい」
私は部屋に戻り、まず書類を分けて、それぞれの役職の人に渡し、私がやらないといけない分を進める。
「コリー王子様、男子生徒の予算書が挟まっていたので渡しときますね」
「ありがとうマード」
「ちなみに、ここの制服代のところですが、計算が間違えていると思います。女子生徒の数字と全く同じなので、手が空いた時に修正したほうが良いですよ。来年度の予算に響きますので。もし確認が必要でありましたら、アイリーン様に女子生徒の分を渡してありますので」
「マードも来て」
「あ、いえ、私も仕事が」
「姉上、マードがいた方が機嫌良い」
むしろ機嫌が悪くなるような……。いや、まあいいや。
「姉上、この予算書の女子生徒の見せて」
「構わないけれど、どうしてマードリアも一緒なのよ」
「姉上、マードがいた方が機嫌良い」
あーあ、またど直球で。
「私、機嫌を取らないとまずい悪魔か何かでも?」
あ、やばい、コリー王子様このままじゃ地雷踏みそう。
「まあまあ、アイリーン様。それよりも予算書の方よろしくお願いします。おそらく先輩方が間違えてしまったと思われるので」
「トレット先輩、一人で私とコーリーを見ながら自分の仕事もやっていたものね。はい、すぐ返しなさいよ。まだ終わっていないのだから」
「分かった」
「それでは、私はこれで失礼します」
仕事もあらかた終わったので、帰る準備をする。
「あ、予定」
あぶな、忘れるところだった。
「フーリン様」
「マードリア、仕事終わったのですか?」
「はい。その、予定なのですが」
「そうでしたね、予定表渡しておきます。決まったら水晶で教えてください」
「え、私がフーリン様の予定見てもいいのですか?」
「大丈夫です。さっき書いたやつですから」
「流石です」
フーリン様の予定をもらったので、他の人の予定も回収しに行く。
「私とダミアは生徒組織がない日は空いてます」
「これ予定よ」
「姉上と兄上が空いてる日は大丈夫」
全員分の予定も回収できたので、今度こそ帰る。
……と、思ったのだが、もう一つ聞くことがあった。
「あの、フーリン様、鉛筆に適した紙ってありますか?」
「鉛筆ですか? そうですね……」
フーリン様も悩んでいるようだ。
「マードリア様がおっしゃっているのは薄紙のことですか?」
「薄紙?」
「ギルドや商人は重宝している紙です。鉛筆に書いたものを消筆で消せるので。あまりマードリア様達には馴染みのないものですので、存じ上げないのも仕方ないかと」
たしかに、貴族は何かしら間違ったらわざわざ一から書き直さないとだし。リリーがいてくれて良かったよ。
「そうなんだ、ありがとうリリー。助かったよ! それじゃあ今度こそ帰るね。また今度会おうね!」
コーリーとダミアが半年以上出なかったのって、話の都合上というより投稿サボっていたからなんですよね。いやほんと、二人には申し訳ない。




