78.漫画、作ります!
もうすぐ夏休みということで、生徒組織のみんなはバタバタしている。特に私は。
「マードリア! この資料も!」
「なんでまとまっていないんですか! いつも直前になってようやくやり始めるんですから!」
「ごめん、舐めてた。こんなに忙しいなんて思わなかったんだよ!」
「一体何してたんですか!」
「遊んでた!」
清々しい笑顔でそう言い放つカロン先輩を見て、少しでもこうなることを予想できなかった私を恨んだ。
「や、やっと終わった……」
「残りは明日やろう。そうすれば夏休みに間に合う……」
「やっぱり私もやるんですか」
「一心同体だよ」
「嫌ですよ。はあ、帰りますね」
「お疲れ様〜」
「お疲れ様です」
部屋を出ると灯りが消えており、他の人は全員帰った事が分かる。
「この調子じゃ廊下も暗いだろうな。嫌だなぁ」
重い気持ちでドアを開けると、ぼんやりと人影が目の端に映った。恐る恐る見てみると、まごう事なき人影が床に座っていた。
「ひぃや!」
と、思わず変な声が出た。
「ん、んん? あ、終わった?」
聞き馴染みのある声が聞こえたので、目を凝らして見ると、ガーラがあくびしながらゆっくり立ち上がっていた。
「な、何してんの?」
正体が分かった今でもまだ心臓がバクバク鳴ってる。
「実は頼みがあって。二人の時じゃないと言えないし」
「分かった。帰りながら聞く」
ようやく落ち着いてきたので、改めて話を聞く。
「それで、頼みって?」
「夏休み明けて少しするとチコの誕生日があるじゃん」
「うん」
「そこでさ、漫画を贈ろうと思うんだ。でも流石にパッドもタブもないこの世界、一人で描くのきついし、協力を要請しようかと」
「漫画か〜、そういえば前言ってたね。でも、時間厳しくない?」
「同人誌くらいの分量で、既存の小説を漫画化するならなんとか間に合わない?」
「うーん、まあ、なんとか? 夏休み潰す覚悟なら」
「大丈夫。それにもうデザイン案とかは出来てるし」
「じゃあ、もう何を漫画にするか決めてるの?」
「うん」
生徒組織の仕事も夏休みの宿題もあるけど、まあ、ガーラを家に泊めて、毎日描くようなら平気かな? ペン入れくらいならジェリーに頼れるだろうし。
「よし、やろう! でも、夏休み中は我が家に泊まって描かないと無理だよ」
「平気だよ。ちゃんと分かっている。ただ、何日かボクも出かける予定があるから、その時はなんとかしてほしい。ほら、距離とかあるし」
ガーラ、そのことも目に入れていたのか。
「分かった分かった。馬車出してもらうから」
ガーラはあからさまにガッツポーズした。そりゃ家からの移動距離が無くなったから嬉しいだろうが、少しは隠す努力せい!
「でも、宿題はちゃんとやらないとね。去年みたいにはできないよ。我が家にはお兄様がいるし」
「うわ、そうじゃん。……まあ、お兄さんがみてくれるならいいや。すぐ終わるし」
「去年みたいにはいかないと思うよ。お兄様生徒会入ってるし」
「え、なに? 大学に生徒会なんてあんの? なにそれ」
「仕方ないよ。貴族が相手なんだから、教授だけじゃどうにもできないことがある。そういう時に学生が入り込めば、子ども同士の揉め事に収めることができるから必要なんだよ。大抵そういうのに選ばれるのは地位の高い生徒だしね。院にいけばそういうのは無くなるけど」
「相変わらず貴族社会は面倒くさい」
「平民も大変そうだけどね。じゃ、私はこれで。今度正式に進めよう」
「うん、じゃあまた」
やっとこの話書けた。前作からずっと考えてたこの話がやっと書けた!




