73 出かけます!
途中からガーラ視点になります。
生徒組織の仕事を引き継がれる前の最後の休日。先延ばしになってしまったフーリン様との外出がやっとできる。
「すみませんフーリン様、お待たせしました」
「いえ、僕も今来たところ。では、行こうか」
そういえば、何気にお兄様以外の男性と二人で出かける事ってなかったな。お兄様にバレたらフーリン様大変そう。
「マードリアはどこか行きたいところある?」
「でしたら本──」
いっけない、本屋はやめておこう。いつも一緒に出かけている人ならともかく、初めて出かける人とはだめだ。丸一日本屋で過ごさせてしまう羽目になる。
「ほん?」
「あ、いえ、服見に行きたいです。自分のではなくて、お兄様の。この前助けてもらったので、そのお礼がしたくて。同じ男性ですし、フーリン様のご意見もよければ聞かせて貰えると嬉しいです」
「カーター様なら武具のほうが喜ばれるのでは?」
「そう思いますよね。実際そう考えられる方が多く、お兄様のお祝い事には大抵剣や防具が送られ、本人もそっちの方に興味が削がれてしまい、あまり服を持っていないのです。ですので、私は服を贈ろうかと思いまして」
「たしかに、カーター様の贈り物は武具が安定だからね。そういうことなら、カーター様の好みに沿うかは分からないけど、僕なりに力になるよ。でも、マードリアからの贈り物ならなんでも喜びそうだけど」
「否定できません」
お兄様なら私から渡せば布切れ一枚でも喜びそう。
「あ、でも僕が一緒にいたことは言わないでね」
「それは重々承知しております」
目的地に着いたので馬車から降りる。今回は王都ではなく帝都で色々と見て回る。と、考えると少し本屋に寄りたかった気持ちがある。
「行こうか」
「はい」
帝都は初めてなので、とりあえずフーリン様に着いていく。
「マードリアは帝都にくるのは初めてだっけ?」
「そうですね。そもそも帝国自体フーリン様の生誕祭などで宮殿に赴く時しか行かないので。学園も一応帝国の中心都市ですけど、言ってしまうとドルチエ王国ですし」
そもそも地理がややこしいんだよ。かなり昔は皇帝陛下が直々に全ての国を統治していたみたいだけど、流石に広すぎて各領地に王様を置いて王国にしたらしい。学園のある場所は、その時の名残で帝国の中心都市(だった場所)に建てたけど、ばりばりドルチエ王国なんだよな〜。
ゲームで初めて知った時もツッコんだっけ。まあ、ガーラのスーウィツ帝国が日本で、各国が県だって説明で一応納得したけど。
「マードリア、この服屋とかどう? 男性服を主に扱っているのだけど」
「いいですね、入りましょう。それにしても、よくご存知ですね。帝都にはよく足を運ぶのですか?」
「いえ、その、実は執事に色々聞いてね。流石に一皇子が気軽に出かけることはできないので」
う、それはよくお忍びで出かけていた私に刺さる。
「まあ、そうですよね。いつ襲われるかも分かりませんし」
「そうですね。でも安心してください、至るところに隠密部隊が警戒していますので」
「そうですね。私の護衛もいますので、むしろいつもより安心できますね」
◇◆〜ガーラ視点〜◆◇
ボクはなぜ、今こんなところにいるのやら……。
「店に入って行ったわね」
「男性用の服を扱っているようですが、まさかフーリン皇子様の服を見繕うとかしてしまうのでしょうか?」
「あのマードリアがそんなことするわけないじゃん。相手がレンちゃんならまだしも。どうせカーター様へのプレゼントとかでしょ」
レンだけ誘ってこなかった事、正直すごく後悔している。いや、まあレンは事情を知らないから仕方ないっちゃ仕方ないけどさ。この三人をボクだけでまとめるの厳しいよ。アイリーンとリリーはマードリア絡みじゃ期待できないし。
「てかさ、なんでボク達二人のことをこそこそつけてるのさ。そんなに阻止したいのならもう突撃すればいいじゃん」
「分かってないわね。相手はマードリアよ。私達が二人の間に入ってしまえば、マードリアは申し訳なく思ってまた後日二人で出かけようとするでしょう」
いや、それは分かってるよ。だからボクはマードリアじゃなく、フーリンに諦めさせようとすればいいのにって思ってるんだよ。
「そういうお優しいところもマードリア様の良いところですが、警戒心が無さすぎるのは考えものです」
うん、絶対聞かないだろうから言わないでおこう。
「なんでチコは二人に付き添ってるの」
「え、だって面白そうじゃん」
それ以外にある? って顔を向けている。いや、分かってたけどさ。たしかにボクも普段なら面白いからついてくけどさ、ストーカーは別でしょ。これマードリアにバレたら怒られるやつだし。
「あ、出てきました」
「行くわよ。バレないよう気をつけなさい」
これが一国の、しかも自国の王女とは、なんとも悲しき現実かな。
完成してるのに投稿しない癖なんとかしないと




