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71 裁判です

 あれから数日、ついに裁判が起こった。本来なら裁判がこんなに早く決まる事はないのだが、貴族同士という事もあり、すぐに決まった。


「それでは開廷します」


 裁判が始まると同時に、互いの弁護人が交互に話し始めたがやはりというべきか、あらかじめバランがカヌレ様の弁護人を買収していたのか不利な言動しかしていない。


「と、このように、カヌレ・ブライト様はチコ・ブライト様が見えていない事を幸いとし、バラン王子様に暴行し、チコ・ブライト様に自身を擁護させました」

「だから裁判なんて嫌なのよ。結局お金を出した方が勝つのだから」


横で見ているアイリーン様は苛立ちが隠せない様子だ。


「それは事実で間違いありませんか?」

「はい」

「では、判決を下します」

「裁判長、少々お待ちください」


裁判長がギャベルを下ろそうとしたところで、フーリン様が動き出した。


「皇子として、結果を早まるばかりに間違った判決を下される事は阻止したいのです」

「それは、皇子様はカヌレ・ブライト様に肩入れするということでしょうか?」


裁判長のその言葉に、傍聴していた貴族がざわつき始めた。


「いえ、違います。真実の鐘がありますよね。それを使おうと思いまして」

「皇子様、流石にそこまでは」

「何か、使われては困ることでもあるのでしょうか?」

「……いえ。真実の鐘をここに」


出てきた。作戦通り。


「リリー、どう?」

「魔法がかけられた形跡がありますね」

「やっぱり、対策済みか」


裁判長が先ほどの弁護人に同じ事を話させた。もちろん、鐘はならなかった。


「皇子様、ご納得いただけましたか?」

「そうですね」


裁判長はフーリン様の答えを聞くと、安堵の息を漏らし、では、とギャベルを上げた。


「ですが、せっかく証人がいるのです。証人の話も聞かねばなりません」

「チコ・ブライト様のことでしょうか? しかし、先ほど言ったように彼女は──」

「いえ、彼女ではありません。もっと身近な人です。彼女をこちらへ!」


扉が開き、ノワールが証言台へと向かっていく。


「君が証人? カヌレ様、見苦しいですよ。その場にいなかった者を証人として呼び出すとは」


バランはカヌレ様を嘲笑っている。ムカつく顔だ。


「証人はノワールじゃないの。お前らなの」

「は? え?」


ノワールがバラン、弁護人、裁判長、カヌレ様、チコの事を指すと、精霊が出てきた。


「全員、正直に言うの。こいつは本当に有罪なの?」


ノワールのその問いを、精霊全員否定した。


「結果は出たの。契約精霊(パートナー)ほど信憑性のある証人はいないの」


バランの余裕の笑みが崩れた。いい気味だ。


「こ、こんなのなんの証拠にもならない! 実際、真実の鐘が──」

「魔法を使えばいくらでもそんな事できるの。これに魔法をかけたのは誰なの?」

「わ、私です」


裁判長の精霊が恐る恐る手を上げた。


「これが事実でしたら問題ですよ、裁判長」

「う、嘘だ! 嘘をついている!」

「精霊というのは本来パートナーを守る存在です。その精霊があなたに不利になる嘘をついていると? それは、あなた達にも言えますよ」


フーリン様のその言葉に全員が黙った。しかし、一人声を上げた者がいる。


「そう、そうだ! 本来味方であるはずの精霊が俺たちを裏切るはずがない。お前は、精霊を操る禁忌魔法を使っているんだろ! そうじゃなきゃ説明がつかない! それを示唆したカヌレ、お前も大罪人だ!」


バランがノワールを指しながら叫ぶ。その言葉につられて、傍聴している貴族もざわめきだす。その中には、やっぱり。というどこか納得した声も聞こえてきた。


「お静かに!」

「禁忌魔法じゃないの。ノワールはそんな事しなくても、お前たちの精霊の本音を引き出す事くらい簡単なの」

「なぜそう言える」

「ノワールも精霊なの。最上位精霊なの」


ノワールのその一言が、最も会場をどよめかせた。


「さ、最上位精霊って、嘘だろ……。なあ!」


バランは自分の精霊にそう聞いたが、精霊は何も言わず、バランの言葉を否定した。


「い、いや、これも禁忌魔法……」

「ノワールさんが最上位精霊という事に嘘はありません」


ずっと傍聴席に座っていたビケット王子様が動き出した。


「これが証拠の資料と洞窟の石です。こちらの石は皆さんもご存じでしょう。精霊の力に比例して光の強さが変わる石です」


ビケット王子様は資料を提示した後、精霊達に洞窟の石に力を入れさせた。そして、一際光輝くノワールの力を前に、誰しも疑いはしなかった。


「我々精霊はパートナーとの絆を大事にしますが、それ以上に立場を重んじます。申し訳ありませんが、ノワール様を前に嘘をつく事はできません」


それからはもう、ひたすらバランが見苦しかった。

精霊には見放され、冤罪のボロは出していき、自ら首を絞めていく。


「バラン、もうやめろ。見苦しいぞ、お前。確かに俺達ブライト家は嫌われているが、それでも助けてくれる者はいる。金を積んでもどうにもならないということをしっかりと学べ」

「……もう一度証言します。兄様は殴っていません。ただ私を守る為、盾になっただけです! まだ、裁判を引き延ばしますか?」

「裁判長、判決を」


こうして、カヌレ様の無罪は証明され、裁判は閉廷した。

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