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64.人生最大の問題です

 テスト休み週間で仕事もないのに、私の気分は晴れない。それは、レンちゃんも同じだ。


コンっ。と、ドアを一つ叩く音がした。

この叩き方はガーラで間違いない。


「どうしたのガーラ?」

「…………」


ガーラは何も言わず静かに部屋に入ってくる。


「チコが、何も話さないんだ。ただ泣いて、ずっと泣いて、自分の部屋に閉じこもって出ようとしない。昨日から何も食べてないと思う。冷蔵庫の中身減ってないし。水は飲んでいるとは思うけど」

「昨日の事ですよね……」

「うん」


ビケット王子様に処分の事について聞いた。

カヌレ様は第一王位継承者であるバランを殴った事、罵った事を考慮してこの采配になったと。そして、生徒組織の一員ということで軽くしての限界だったと。もし生徒組織の一員でなければ半年の停学、下手したら退学になっていたと。


バランの方は、チコを強引に連れて行こうとした事、私を非難したということ、仮にも生徒組織の一員なので一週間の停学になった。

チコに実害は出ていない、私はバランよりも身分が低いことが災いして、こんなに短い停学になった。


「一ヶ月以上の停学は、ここの大学への進学は出来ないのですよね。たとえ生徒組織だったとしても」

「うん」

「チコは、冤罪でどうしてお兄さんがそんなに追い詰められないといけないのって、ずっと泣いている」


大学に進めない事は、貴族にとって家のお荷物になるのと同じ。他の大学に行っても、問題を起こした貴族と知れ渡っているため、肩身の狭い日々を送ることになる。


「どうにかできないの? マードリア生徒組織でしょ」

「私も言ったよ。でも、ビケット王子様が──」

「被害を最小限に抑えてこれなんだ。もしこの判決を覆したいなら、裁判を起こす羽目になる。だけど、そうすれば国民に伝わる事になるし、今回の騒動を知る手立てのない貴族にも伝わる。何より、バランは裁判官を買収する。そして、ブライト家は裁判官を買収してまでカヌレを守ろうとはしない。顔だけ貴族と言い始めたのは、ブライト夫妻だから」

「──て言われて。たしかにそうだと思った」

「では、カヌレ様はこの判断を受け入れるしかないのですか?」

「このままだと、チコも悪く言われるよ。チコの立場は、いわばいじめっ子を庇っている盲目な子だから」


ガーラは手を強く握り、体を震わせ、行き場のない怒りを必死に抑え込んでいるようだった。


「レンちゃん、留守番頼める?」

「何かされるのですか?」

「生徒組織の特権を使う。ガーラ行くよ、お兄様に会いに行こう。お兄様なら何か案をくれるはず」


私は手帳の『週に一度、生徒会の一員との面会を認める』という文字を見せる。付き添いは一人までというところもしっかりと。


「それじゃあ行ってきます」


 馬車を用意していない為、歩いて大学まで赴く。


「前、ノワールとラミス。あの、小ちゃい生徒と私の精霊にね、私達の周りでは問題が頻発するって言われたの」

「そうだろうね。今のチコの状況だってボクのせいだもん。ボクが一年の時成績を落とさなければ、元々チコに婚約の話なんて行かなかった。ボクがあいつをチコから遠ざける時、煽るような事を言わなければあいつはムキにならなかった」


煽ったのか、さすがガーラ。


「ボクがガーラのままなら、チコは今泣くことなんてなかったんだよ」


そんな事ないよ。なんて無責任な言葉、泣くのを我慢しているガーラには言えなかった。


 それから私達は何も喋らず、大学までやってきた。


 ……あれ? 生徒会室どこだっけ?

ガーラはそもそも生徒会室の場所なんて分からない。他に知人もいない。どうしよう。


「あの、もしかしてマードリア様ですか? カーター様の妹の」


そう声をかけてくれたのは、女の先輩だった。


「あ、はい」

「カーター様に会いにきたの?」

「はい」

「なら案内するよ。カーター様はいつも鍛錬場にいるから」


先輩についていくと、本当にお兄様が上半身裸で剣を振っていた。服で隠れていて気づかなかったが、中々良い体だと思ってしまった。


「あれ、リア! それとガーラさんも。ここまでどうしたの?」

「あの、お兄様、助けてください」

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