48.食事の前の挨拶です
私達は席に着く前に、公爵夫妻と国王様、王妃様、リリーとダミアの両親に挨拶を済ませた。
チコの隣の席に座ると、こっちを見て微笑むだけで、何も言わない。
いつもなら
「来るの遅いけどどうしたの〜?」
って聞いてくるのに、それもない。原因は両親だろう。
「マードリア様、時間も無くなりますし、食事を取りにいきましょう」
「うん、そうだね。ガーラとレンちゃんも行こう。ガーラ?」
ガーラは立ち上がって、それぞれ公爵夫妻の斜め後ろに立つと、頭を低く下げた。
「初めまして、チコ・ブライト様のペアをさせていただいてます、ガーラ・アウダーと申します。昨年は一時成績不振となり、大変申し訳ありませんでした。今後はそのような事がないよう精進してまいります」
しばらくの沈黙の後、公爵様が口を開いた。
「その言葉に恥じぬよう、勉学に励みたまえ」
そして、公爵夫人が口を開く。
「二度と、ブライト家に泥を塗ることのないように」
「はい。失礼します」
ガーラはこっちに戻ってくると、私の袖をほんの少し引っ張った。
「食事取りにいこっか。ってあれ? レンちゃん?」
レンちゃんを探して辺りを見回すと、私の両親に挨拶をしていた。そういえば、色々あって挨拶できていなかったんだっけ。
私達はレンちゃんの方に向かった。
「しかし、レンさんもとても可愛らしいな。人柄も良い。マードリアに聞いた通りだ」
「マードリアのペアで何か困った事はない?」
「いえ、そんなことありません。むしろ、私がマードリア様の力にならなくてはいけないのに、マードリア様に助けられてばかりです」
「そんなことありませんよ。マードリア様は、帰ってきたら必ずのようにストル様のお話をされています。ストル様と過ごす時間が、とても有意義なものとなっているようです。いつも、マードリア様の傍にいていただきありがとうございます」
なんか、家でレンちゃんの話をしていることが本人に届くのが恥ずかしい。
「レンちゃん、いつもありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます」
「どういたしまして。それじゃあ、食事取りにいこう」
「はい」
お父様達に一度会釈をして、カウンターに向かう。
「リア、別に来なくとも僕たちが運んだのに」
お兄様とフーリン様はトレーを三つ持っていた。
「ありがとうございます、お兄様、フーリン様。落としては大変ですので、後は自分達で持ちます」
「席まで持っていきたい気持ちもありますが、落として皆さんに迷惑をかけるわけにもいきませんね。お願いします」
「リア、それじゃあこの腕に乗せているのを持ってくれるかい?」
「分かりました」
「ガーラさんは僕の腕にあるのをお願いしても良いですか?」
「はいはーい」
「私も持ちます」
「カーター様、受け取ってもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。ありがとうございます、ストルさん」
「んじゃ、食事の用意も出来たことだし戻りますか」
「うん、そうだね」




