42.休憩時間です!
休憩に入った。生徒達はそれぞれの親元に向かい、親が来ていない者達の大半は昼食を摂るために寮に向かうか、その場で友人と話し込んだり、教室に向かったりしている。
「リアー! リアの戸惑っていた姿可愛かったよ。それと、多くの人の前で進行を妨げた事に対して頭を下げて謝り、促したところは立派だったよ。あの時のリアもとても可愛かった。やっぱりリアは世界一だ!」
「あ、ありがとうございます。ただ、レンちゃんがいるので少々控えていただいてもよろしいでしょうか?」
お兄様は目線を私の斜め後ろにずらすと、姿勢を正した。
「ストルさん、久方ぶりです。元気にされていらっしゃいましたか?」
どうして他人にはこんなに立派な姿勢と口調なのに、私にはああなのだろうか……。
「はい、おかげさまで。マードリア様はもちろん、他の皆様のおかげで楽しく過ごしております」
「それは何よりです。今後とも、マードリアのことをよろしくお願いします」
「はい、至らぬ点も多々ございますが、マードリア様のペアとして日々精進してまいります」
お固い挨拶が終わり、私達も家族と一緒に昼食を食べようとお母様とお父様とジェリーを探したが、全く見当たらない。
「お兄様、お母様達はどちらに行かれたのですか?」
「お父様とお母様は他のご家族に挨拶をしに、ジェリーとストルさんのご家族は妹さんをトイレに連れていったよ」
「レンちゃんの家族と一緒にいたんですか? お父様とお母様ってレンちゃんの家族知っていましたっけ?」
「たまたまお父様の仕事の協力者としてストルさんのお父様が雇われ、その時に仲良くなってって感じらしいよ。今日ジェリーが遅れたのも、ストルさんのご家族を迎えにいっていたから。ジェリーはストルさんの家を知っているしね」
そういうことだったんだ。そういえば、レンちゃんのお父さんって貴族から依頼がくるほどの冒険者だもんね。
「あの、わざわざ馬車を出していただきありがとうございます」
「いえ、構いませんよ。むしろ、リアと仲良くなっていただいたお礼です。これくらいはさせてください」
まずい! このままではレンちゃんの謙遜が発動してしまう。どうにかして話を逸らそう。
「お兄様、レンちゃん、せっかくなので他の家族にも会いましょう。家族ぐるみで仲を深めた方がいいと思うのです」
「うん、そうだね。あーでも、ブライト家はやめといた方がいいと思うよ」
「どうしてですか?」
「公爵夫人は少々厳しい方でね、あまり平民や下の身分の貴族を好まないのだよ。僕達侯爵家はまだ大丈夫だと思うけど、ストルさんは控えた方が良さそうですね」
そこまで言われると気になってしまうのが人間の性だが、貴族社会での好奇心は時に命取りとなるからやめておこう。もし行くならお父様達と一緒の時にしよう。
「公爵家の方々はチコ様のご家族ですよね?」
「そうですよ」
「チコ様とカヌレ様を見る限り、公爵夫人がそんなに酷い方だとは思えませんが」
「閣下は夫人に強く出られないだけで、良い方ではありますから。それと、チコ様にはカヌレ様もいらっしゃいますから」
「そうですね」
まあ、成績が一回落ちたぐらいでクズ貴族と言われる程の奴の所に嫁がせようとした親だもんね。このことはガーラにしか言ってないから知らないだろうけど。




