40.観客席の一時です
客席に戻って早々ガーラに肩を組まれる。
「残念だったねマードリア。ま、お題がお題なだけに責められないけど」
「それは良かったよ」
「マードリア様、お疲れ様です」
「ありがとうレンちゃん」
同じ笑顔のはずなのにどうしてここまで違うのか。
顔の形状なのか、はたまた日頃の行いなのか。
「あ、男子の部がもうすぐ始まるよ。……あれ? ねえ、コーリーが出てるよ」
「え、あ、ほんとだ。コリー王子様も魔力が弱いのかな?」
「それとは逆ですよ」
後ろから声をかけられて驚いてしまった。
「フーリン様でしたか。それで、逆とはどういうことでしょうか? アイリーン様と同じで一度に放てる魔力量が少ないのですか?」
「驚かせてしまって申し訳ありません。コーリーは、アイリーン様と違い、一度に放たれる魔力量が多いがゆえに、制御が難しいのです。コーリーは魔力操作が苦手なようですからね」
たしかに、その状態で出るのは危ないか。姉弟でお互いの足りないものを持っているのか。なんだか面白い。
「それより、フーリンは自分の席を外れていいの?」
「ご存知ありませんでしたか? 席は自身のチーム内でしたら自由に移動して大丈夫ですよ。ルールブックにも載せていますよ」
「え、そうなの? ていうかそんなのもらってないし。レンはもらった?」
「いえ、受け取っていません」
「おかしいですね、マードリアが二人に渡すと言って個別に持っていったので、部屋には届けなかったのですが」
そう、そういえばそうだった。帰宅した時間が夕食の時間だったから、机の引き出しに入れてあとで届けようとしたんだ。それで……。
すっかり忘れてたのだ!
「えっと、フーリン様」
「どうしましたか?」
「人を信じて何もしないと、時に失敗を招きますよね」
フーリン様が浮かべる薄ら笑いが怖い。
「あとで皆さんに報告しておきましょうね」
「…………ご慈悲は」
「それは、皆さん次第ですね。マードリアにもしっかりと、今の発言を含めて反省していただきたいので」
「も、申し訳ありません!」
「マードリア、少し遅いですね。大丈夫ですよ、皆さん優しいので」
フーリン様は何気に恐ろしい。去年、私の部屋まで送ってもらった時学んだはずなのに、普段のフーリン様が優しいからすっかり忘れていた。
──ずっと運動祭が続けばいいのに。
そんな思いに反して、男子一戦目開始の合図が学園中に響く。
「さあ、コーリーを応援しましょう。マードリアも、今は後のことを忘れて楽しみましょうね」
フーリン様のその言葉が私に追い討ちをかける。
「はい……」
マードリアはちょくちょくやらかすからね。
運動祭後が楽しみだよ。
今日百合の日なんで絶対投稿しなきゃって思ったんですけど、スポットライトがほとんどマードリアとフーリンというね。




