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2.自分の鈍感さには呆れました……

 鐘の音が学園中に広がる。


「ああ‼︎ 始業式!」

「急ぎましょうマードリア様」

「うん、でもちょっと待ってて」


私は本来行くべき方とは逆に歩き、曲がり角を覗く。


「ご機嫌ようお二人さん。人の告白現場は面白いかい?」

「お、おはようマードリア〜」

「いや〜ね、別にボク達何も見てないよ〜。ただここを通っただけでね。うん、マードリアのメルヘンチックなキスなんて全然見てないよ〜」


ガーラ、誤魔化す気全然ないじゃん。チコなんて目泳いでるし!


「いつから?」

「「最初から見てました」」

「アイリーン様に言うの?」

「リリーちゃんはともかくアイリーン様に言ったらどうして止めなかったの⁉︎ って言われそうだから言わないよ」

「あー言いそう。私が許したのは告白までよ! ってね」

「え? アイリーン様リリーが告白するの知ってたの?」

「知っていましたよ。それぞれ相談して、告白する順番を決めたのです。ですが、私達は告白が早かろうが遅かろうが結果は変わらないと知っていましたから結構スムーズに決めました」


そうなんだ。でもそしたら恋敵と同じ部屋って……。


「マードリア様、そんなに難しい顔をしないでください。たった一つの感情で今までの仲が崩れるほど、私達の絆は弱くないです。それに、アイリーン様は良い人ですから」

「うん、そうだよね」


一年間ずっと、いろんな事で絆を深めていったもんね。


「というか、お互いマードリアの事が好きって口に出していないだけで気づいていただろうしね」

「そもそも気づいてないのマードリアとカーター様、あとビケット様ぐらいじゃない? レンちゃんは知らないけど」

「コーリーはなんかよく分からない」

「あー確かに。リリーちゃんはともかくアイリーン様の事は気づいてそうなんだけど……。どうなんだろう?」


え? えーっと、え?


「そんなにみんな気づいてたの⁉︎ え、いつから?」

「あたしは十歳の時にあの精霊の洞窟でアイリーン様に好きだって確証とったよ」

「ボクは入ってすぐに」


私はリリーの方を見る。たぶんその目は結構必死だったと思う。


「私もその、マードリア様に呼ばれた後、部屋に戻った時の反応でなんとなく……」

「嘘……」


ミーどんだけ鈍感なの?


「というよりちょくちょく気づかせようとしてたよ。ね」

「うん、マードリア引くほど鈍感だから」

「だって〜普通思わないよ」


なんだろう、アニメとか見てると気づくだろ! って思ってたけど、実際自分の身に降りかかると気づかないもんなんだね。


「あ、良かった、皆さんここにいましたか」

「レンちゃんどうしたの?」


レンちゃんは息を切らしている。必死に走ったことが伺えるけど、なんで?


「あ! 忘れていました、始業式が始まります!」

「あー! ほんとだ、早く行くよチコ。また怒られるなんてたまったもんじゃない!」

「覗き見してたなんてバレたら雷落ちちゃうよ」


 曲がり角を曲がったはずの二人は後退りで戻ってきた。


「一体どなたの雷が落ちるのかしら?」

「あーいや、その、ね。ボクは止めたんですよ。だけどチコが」

「ちょっ、あたしに全部(なす)りつける気⁉︎ 信じられない、それが貴族に対する態度? 普通全ての罪をガーラが被るもんでしょ!」

「ボクは貴族とかどうでもいいし。そうやって権力振りかざすのは良くないと思いますよ〜」

「二人ともここにいる時点で同罪よ」


とりあえずアイリーン様は二人に任せて、私はこっそり行かせてもらいましょう。


「レンちゃん、ここまで迎えに来てくれてありがとう。走るから背負うよ。つかまって」

「そんな! 悪いですよ」


と言いつつも、呼吸の荒いレンちゃんを無理に走らせるわけにいかない。


「レンちゃん、命令」

「わ、分かりました」


レンちゃんはしぶしぶといった感じで私の背中に乗った。


「リリー、時間はあとどのくらい?」

「走ってギリギリでしょう。急ぎましょう」

「うん。──三人も早く走って! お説教はあとでしてあげて」


最後の一言を聞いた時の二人の顔は面白かった。

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