32.発見です!
もう他の生徒は既に帰っており、学校に残るのは私達生徒組織と一部の先生だ。
「全然ないわね」
「すみません、会計の仕事を切り上げさせていただく事になって」
「別にいいわよ。それよりも、見つからない方が今後の仕事に響くもの」
「そうですね」
こうして、別室の男性書記以外の人達で大捜索しているというのに、全く見つかる気配がしない。
「ダメだな、会長室にはない」
「資料室にも無かった」
そう言って顔見せて早々頭を横に振った。
カロン先輩に関しては冷や汗をかいている。
「組織室も半分は探したんですが、ありませんでした」
「となると、もう半分にあるということか」
「半分、といってもかなりかかりそうですね。とりあえず手分けして探しましょう」
私達は四方向に分かれて探し始める。
「下の方はないから、上の方かな? ショコラ先輩、お願いできますか?」
「ごめんね〜ちょっと魔法使うの疲れてきて、制御できるか不安だからやめておくよ。会長は?」
「俺も会長室で散々使ったからな。カロンもそうだろうし」
「ごめん、役に立てなくて」
「全然大丈夫ですよ。お気になさらずに」
でもこうなると大きな脚立とか、せめてはしごが欲しいな。ラミス……は本とか触れないし無理だよね。
「マード」
「どうしましたか? ……あ、それって!」
コリー王子様の手には、少々年季の入ったはしごが握られていた。
「マード、上見れなくて困ってたから」
「ありがとうございますコリー王子様」
コリー王子様は嬉しそうに微笑んだ。
「僕が支えるから登って」
「ではお言葉に甘えて」
はしごに手を掛けようとすると、フーリン様が慌てて声をかけた。
「ダメだよマードリア⁉︎ 落ちたらどうするんだ。危ないよ」
「ですが、流石にフーリン様に登らせるわけにもいきませんし、このはしごは少々年季が入っているので、軽い私の方が良いと思うのです。それにこれは書記の仕事で、本来であればフーリン様達は何もしなくていいので私にやらせてください」
「ですが……」
「なら男二人ははしごを抑えててあげな。そうすればそうそう壊れないだろうし。俺たちもこっちの方探すから」
「……分かりました」
ビケット王子様の助言で、なんとかフーリン様が折れてくれた。
「それでは失礼して」
「待ちなさいマードリア、心配だから私が登るわ」
「え、でもアイリーン様はしごって登ったことありますか?」
「い、いえ、ないけど」
「この細い木の棒に足をかけて、上の方まで登ったら、手を離して予算書を探せますか?」
アイリーン様ははしごを見て、本棚の上を見る。
「だ、大丈夫よ」
その引きつった顔が全てを物語っている。
「無理なさらないでください」
「でしたら私が登りますよ。はしごなら登ったことありますし」
今度はリリーがやってきた。
本当に怪我する可能性を背負わせたくないから、私が登っちゃいたいんだけどな。
「いや、リリーもほら、ね」
「何も問題ありませんよ」
「いやーそのー」
良い言い訳を思いつけ私‼︎
「リ、リリーは予算書がどんなものか分からないでしょ。だから、見逃しちゃう可能性があるし。ほら、上だとそうじっくり見れないし」
「──それもそうですね」
よーし、上手く回避できた。それじゃあ早速探しますか。
「あなた達、絶対上を向いたらダメよ。マードリアの尊厳にも関わるのだから」
「分かってますよ」
「分かってる」
アイリーン様も男子二人に注意を促してくれたので、はしごを登る。
はしごを登って降りてを繰り返していろんな場所を探したが、全く見つからない。
「ここもない。本当にどこにあるのやら」
次の資料に手を伸ばそうとした丁度その時、第一資料室のドアが開いた。
「今日拾った予算書女子のやつだったみたいだ。悪りぃ」
そう言ってダミアが見せた紙に、誰もが放心状態になったと思う。
悲しいような、悔しいような、申し訳ないような、呆れたような色々な感情が折り混ざった気持ちがする。
「それー! ずっと探してたやつ!」
「うぉっびっくりした。なんだよ、言っとくけど責めるなよ。元はといえば落とした奴が悪いんだから」
「面目ない」
「でもこれで解決して良かったよ」
「なんのことだ?」
「ずっとそれを探してたんだよ」
「そうか。ていうかいつまでそこにいるつもりだよ」
「今降りるつもりだよ」
ミシミシと音を立てるはしごを慎重に降りていく。
──慎重に降りていったはずなのに、腐っている場所に足をかけてしまい、そのまま落ちてしまった。
ま、そうなるよね。
追記 今後、小説の投稿は平日は一日おきにさせていただきます。




