29.テスト勉強です!
五月中旬となり、生徒組織の仕事も一旦お休みとなった。
つまりテスト期間ということだ。
「マードリア、レン、ヘルプ!」
ドアを少々強く叩きながらそう叫んでいるガーラの声が聞こえる。
「はいはいどうぞ、待ってましたよ」
「ノート纏めたので見ますか?」
「ありがとう、お邪魔します」
ガーラは私の机に参考書を置いてイスに座る。
「私が勉強できないじゃん」
「マードリアなら大丈夫だよ」
「どこからそのセリフ出てくるの」
「声帯」
相変わらずの口だな。まあ、なんやかんや許している私も悪いんだろうけど。
「マードリア様、もしよろしければ私の机をお使いください」
「いや、それは悪いよ。レンちゃんが机で勉強できなくなるじゃん」
「私はガーラちゃんに勉強を教えますので大丈夫ですよ」
嫌な顔せずそんな事を言えるレンちゃんよ、一体どんな環境で育ったらそんなことが言えるのだ。
ガーラにレンちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたい。
「なに、その目」
「別に〜。レンちゃんごめんね、使わせてもらうね」
「はい、どうぞ」
なんていい笑顔なんだ。どうして同じ人間のはずなのにこんなに変わってしまうのか。まさに天使と悪魔だよ。
「マードリア」
「なに?」
「もし今回順位が落ちたら、生徒組織の役員ってどうなるの?」
……たしかに、どうなるんだろう?
「知らないんだ」
「いや、そんなわけじゃ……」
「え、それじゃあ知ってるわけ? なら教えてよ〜、ボク気になるな〜」
意地悪な顔だ。ほんと、ガーラによく似合うよ。
「ガーラちゃん、そんな事言って勉強から逃げて順位を落とすと、またチコ様に怒られるよ」
「レン、チコの名前を出すのは反則だよ。知ってる、チコとかリリーみたいなタイプは怒らすと一番厄介なんだよ。
ちなみにそこまでなのはマードリア。マードリアに怒られて怖かったこと一度もないし」
ガーラはそう言うと私の方を向いてニヤついた。
余程私に怒られたいのかと思ったが、怒るだけ無駄なので、私はガーラに消しゴムを投げるだけにした。
「うわー、横暴貴族ー」
「棒読みで言われたところでなんとも思わないよ」
「もう、ガーラちゃん。そろそろちゃんと勉強に取り組まないと教えないし、ノート返してもらうよ。
マードリア様も、物を投げるのは良くないですよ」
「今後は気をつけます」
「今から集中するので教えてくださいレン様」
「もう、ガーラちゃんは調子が良いんだから。どこか分からないところある?」
「ここが分からないんだけど」
レンちゃん、ガーラと一緒の時は少し緩んだ顔をしている。
やっぱり、貴族に対しては気を使うのかな?
もっと、平民と貴族の仲が縮まればいいのに。
テストの結果は順位変動なしだった。
次は運動祭だ、頑張らないと。
一章はこれで終わりになります。
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