1.告白されました
「好きです」
どーしてこうなってしまったのか。
始業式当日の朝、私はアイリーン様に告白された例の場所で、リリーに告白されている。
リリーもまた、顔は真っ赤に染まり、心なしか目がいつもより鋭く、なのに弱々しい感じがする。
「えーっと、その、そういう好きだよね?」
「はい」
だよね……。私のどこにそんなにモテ要素があるのか……。あれ? もしかして
「あの、この学園で初めて会った時に言ってた天使のような方って」
「もちろん、マードリア様の事です」
「という事は、あの洞窟で会った時からずっと片想いをしていたってこと?」
「そうなりますね」
そうか、ずっと私の事を思っていてくれていたんだ。
この時私の中にあるリリーに関するピースがどんどん当てはまっていく。
よくよく考えると私結構……。鈍感すぎでしょ私!
「ごめんねリリー。でも返事は──」
「今はいいです。どうせフラれるのなら、マードリア様が心から愛する方ができた時がいいのです。もちろん、それが私なら何よりも幸せですが」
リリーはほんの少し重荷が取れたような顔をしている。
好きを伝えられないってそんなに辛かったんだ。そうなると、コリー王子様、アイリーン様、それにリリーは凄いな。
なら、私はそんな勇気を出してくれたリリーに感謝を伝えないと。
「ありがとうリリー、私を好きになってくれて、好きを伝えてくれて。今はしないけど、必ず返事をするから。間違いのない返事を。
もしかしたらそれでリリーを悲しませちゃうかもしれないし、逆に喜んでもらえるかもしれない。どうなるかは分からないけど、しっかりと受け取ってほしいな」
「もちろんですマードリア様。フラれてしまうのは悲しいですし、しばらくは落ち込むかもしれませんが、マードリア様が幸せでいてくれる事が一番ですから」
なんて良い子! こんな良い子に心を奪われないなんて私どれだけ手強いのよ!
「リリーは本当に優しいね。私だったらそんな事言えないかもしれない。私、みんなが思っているほど心なんて広くないから」
「そんな事ありません! 赤の他人、しかも顔の見えない私にすら優しくして下さったマードリア様はとてもお優しいです。私はあの時来てくださったのがマードリア様で良かったです!」
「私も、あそこで会えたのがリリーで良かった」
リリーは少し薄くなってきていた頬の赤みを元に戻していった。
「あの、マードリア様」
「どうしたの?」
「その、えっと……」
もじもじしているけどどうしたのだろう? トイレかな? いや、流石に違うでしょ。
でも心配は心配なのでリリーに近づく。
「リリー大丈夫? 何かあるなら言ってくれていいよ」
「その、キッ」
「キ?」
「キスを、してみてもよろしいでしょうか? その、チコ様がアイリーン様とマードリア様がキスをしているのを見たと言っていましたので、その、少々羨ましく思いまして」
……見られてたの⁉︎ いや、ていうかチコってアイリーン様とリリーが私の事好きだって気づいていたの⁉︎ てことはガーラも? くっ、してやられた。
「チコとガーラ、後で文句言ってやる」
「あの、あまり責めないであげてください」
「うん、まあ気をつける。それでその、いいよ。キス」
改めて口にするとすっごく恥ずかしい。私まで顔が赤くなってないか心配になる。
「ほ、本当ですか!」
「うん、本当本当」
「それならもう一つわがままを言ってもいいですか?」
「できるものなら別にいいけど」
深めのキスはちょっと考えものだけど。
「マードリア様からしてもらえませんか?」
「……ええ‼︎」
これまた別の意味でハードなのきたよ。
「無理にとは言いません! キスが出来るだけで私は満足ですから」
「い、いや、いいよ」
アイリーン様は私のファーストキスを奪ったのだから、私がリリーのファーストキスをもらわないと公平じゃないしね。
「えっと、その、それじゃあ」
「はい」
リリーの肩に手をかける。
キスをする為に顔を近づけていく。場所がよく分からないので、目を瞑るなんてことはできない。
目を瞑ってキスする人ってどうやってんの? と思ってしまう。
いやまあそれは置いといて、リリーってほんと綺麗。真っ白、いや、今は赤くなっている肌はきめ細かくてすべすべ。本当に平民? って思うくらい。これが美白肌というものか。
鼻筋も通っていておまけに高い。まつ毛も長いし、顔全体小顔なのにたぶん黄金比。卑怯でしょ、いくらゲームの主人公だからって卑怯だよ!
そんなこんなでじっと見ていると、様子を見る為か、目を開けたリリーとばっちり近距離で目が合った。
うわ〜目も綺麗で大きい。なんて呑気に考えていたが、リリーは私と真逆でちょっとしたパニック状態だ。
「マ、マードリア様! そんなに見つめられると私、倒れそうです」
足の力が抜けていったのか、リリーはヘナヘナと地面に座り込みそうになる。
「え、えーっと、そうだ!」
リリーが呪われた時の事がここで役に立つとは思わなかった。私はリリーの膝部分と腰を持って、所謂お姫様抱っこをした。
「ごめんねリリー。リリーがあまりにも綺麗だったからつい見惚れちゃった」
リリーは両手で顔を覆う。
「マードリア様はずるいです」
そんなこと言われてもな〜。事実を言ったまでだし。
「それよりもリリー、え、えーっとキスしなくてもいいの?」
「します。その、今度はあまり見つめないでください」
「善処します。あとリリー、手を首に回してもいいから少しだけ顔を近づけてもらってもいい?」
「こうですか?」
「うん、そう」
なんだろう、自分からするキスがまさかのお伽話のようなメルヘンチックなキスになるとは思わなかったよ。
こうして、私は満開の桜が咲く木の下で、お姫様抱っこをしたまま自らリリーと唇を重ねた。
感想としては柔らかかったというのと、ほんの少しリリーの味がした気がした。
リリーの味なんて知らないけど。
大変長らくお待たせしました!
実は最初だけ全然書けず、思った以上に期間が空いてしまいました。
楽しみにしてくださった方がいましたら本当に申し訳ありません。
これからよろしくお願いします!