26.付き添いをお願いします
「あなた達、邪魔よ」
私達三人は、その声に条件反射的に固まってしまった。
「も、申し訳ありません。皆さん、横に逸れましょう」
レンちゃんに引っ張られて私達は右に逸れる。
「出入り口を塞ぐなんて、周りの迷惑も考えなさい」
「すみません」
「ですが、誰も通らなかったみたいですので良かったです。今後気をつけていただければ、今回はそんなに気にやむ必要ありませんよ」
「リリーさんはすぐそうやって甘やかそうとするのだから。ここはしっかり言わないとダメよ」
「私は貴族の方々に強く言えないので」
「仮副会長が何を言っているのよ。いずれ、貴族平民関わらず、強く言わなくてはいけない日がくるのだから」
「その時は頑張ります」
うん、あまり気にする必要無かったかな。
好きな人が同じだからって、必ず犬猿の仲になるわけでもないしね。
「マードリア様」
レンちゃんが小声でそう言ってきたので、私は耳を近づける。
「どうしたの?」
「リリーちゃんかアイリーン王女様に聞かなくてもよろしいのですか?」
「あ、そうだね。授業だと離れるもんね」
私はリリーの方に寄って話しかける。
「ねえリリー、お願いがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「ある一年生を調べたいんだけど、その子、授業中以外はどこか行くらしいの。だから、許可が取れたら付き添ってほしいんだけどいいかな? 授業を休む事になるから無理にとは言わないけど」
「構いませんよ。そちらは生徒組織の仕事ですよね?」
「うん。授業中の仕事になるから、生徒組織の人の方がいいかと思って」
それに、リリーは気を失っていたとはいえ、一度ノワールに会ってるから、ノワールも初対面の人よりかはいいだろうし。
「それなら私じゃダメなの? リリーさんは仮とはいえ副会長なのだから、覚えることも多くて大変なはずよ」
「それでしたらアイリーン様も大変だと思いますよ。会計のトレット様はコーリー王子様にも仕事を教えていらっしゃいますので、通常より教えられる仕事量は少ないのではないですか?」
「あら、心配してもらわなくとも問題ないわよ。コーリーも私も、教えてもらったことは一回で覚えるもの」
少し前言撤回。この二人、私に告白を済ませてからというもの、よくバチバチしていた気がするわ。
うん、恋って恐ろしい。
「あの、アイリーン様、お気持ちは嬉しいのですが、今回はリリーの方がいいので」
「そう。でも、リリーさんがコア先輩に許可を取れなければ、私を頼りなさい」
「はい」
「安心してくださいマードリア様。ショコラ先輩はとても寛容な方ですので、お許しをいただけますよ」
「私からも説明するね」
私も一応カロン先輩に許可取った方がいいかな? ビケット王子様に改めて許可取らないといけないからその時にでも聞いてみよう。




