14.本音
食堂の賑わいがこもって聞こえる場所まで移動する。
「大丈夫ですか?」
「泣いてないわよ」
アイリーン様は顔を上げて証拠を見せる。
「用意していましたハンカチが無駄になっちゃいましたね」
「どうしてマードリアはそういう時だけすぐ勘づくのよ」
「どうしてでしょうね」
ここからお互い話さない時間が続く。
食堂で賑わっているのがよく分かる。
「嫌でも感じてしまったのよ」
アイリーン様がそう言って静寂を破った。
「コーリーの言う通り、女性同士の恋愛をしかも貴族が望んでいるなんて。
平民との恋愛すら難しいのに、女性同士の恋愛だなんてもっと難しい。
分かっていたはずなのだけど、改めて言われると、ね。
だからつい、コーリーが一番言われたくないことを言ってしまったの。そのせいで、私の弱い部分が露呈されるなんて考えてもいなかったわ。コーリーの言う通り、私はあなたからの返事を聞くのが怖かったのよ。
フラれてしまえばマードリアとの、他のみんなとの今までの関係が崩れてしまう。もっと言うならば、あなたは私を軽蔑してしまうかもしれないと」
「どうしてですか?」
「あなたがいくら女性同士の恋愛小説が好きだからといっても、あなた自身がそうとは限らないじゃない。もしかしたら女性同士の小説はフィクションだと割り切っているからいいとして、現実では否定派かもしれない。だから、チコとガーラにはかなり救われたのよ」
「え、チコとガーラにですか?」
あの二人、陰ながら何かしてあげていたのかな?
「特に大それた事はしていないわ。けど、とても大事なことよ」
「教えてもらえますか?」
アイリーン様はさっきまでの暗い顔とは打って変わって上品な笑顔を見せる。
「背中を押してもらったのよ。とても大事なことでしょう」
「はい、大事ですね」
気持ちを伝えることの難しさ、そのほんの一端を私は知っていると思うから。
「正直言うと、リリーさんがマードリアを好きっていうのを知った時もほんの少し救われたの」
「ライバルが増えるのにですか?」
「ええ。リリーさんは平民で女性。正直、恋愛するのにあたってものすごく難しい位置にいる。それなのに彼女は絶対に恋を諦めたりしない。そんな彼女の姿を見てると励まされるのよ」
「……つまり、リリーはアイリーン様の恋敵であり、支えなんですね」
「そうなるわね」
「仲良くしてくださいよ」
「当たり前じゃない」
さっきちょっとばちばちしていたから言ったんですよ〜。
「……? 何を笑っているの?」
「いいえ、何もありません。それよりアイリーン様、もう大丈夫ですか?」
「……ええ」
「それじゃあ戻りますか」
「そうね。……あの、マードリア、手を繋いでもいいかしら?」
目を逸らし、髪の毛をいじりながらアイリーン様は恥ずかしそうに聞いてきた。
「どうぞ」
私が手を差し出すと、アイリーン様は優しく包み込むように握った。
私の手を握ったアイリーン様は幸せそうな顔をしていた。
始業式の日だけでこんなに続くとは思ってなかった。
盛り込みすぎなんだよ! だから展開遅いんだよ!
と、書いてるたびに思います。
とりあえず一日やっと終わりました。
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