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〈閑話〉埃の精霊 精霊の埃 2

「一口に精霊と言っても大まかに三つの分類で区別できる。『環境系』『動物系』それから『異形系』の三種だね。環境系は自然現象や土地ごとの風習や言い伝えに結びついているような精霊。さっき少年が見たパサパサもこの分類だったはずだ。次に動物系。これは結構大雑把な分類なんだ。動物っぽい見た目であれば大体ここに含められるんだけど、“動物だと思われてたけど実は精霊だった”なんてこともあればその逆もある。ね、大雑把だろう?そして最後に異形系。姿形が既存の生物や常識からかけ離れている面白い精霊が多いね。人によってはこっちの部類にパサパサが入るんじゃないかって意見もあるんだけど。でもまあ、明確に分類する必要もないから、分かりやすければ何でもいいような気がするけれどね。……それはそれとして、聞いているかい?少年。」


 よどみなく説明を続けていたコユビさんは、思い出したかのようにこちらに視線を向ける。柔らかい日差しの中、肩口で切りそろえられた髪の色と同じ、灰のひとみと目が合った。

 「……聞いてますけど」

 かろうじてため息は飲み込めた。しかし退屈たいくつ諦観ていかんは顔に出てしまっていたと思う。しかしそれも仕方がないと言えるだろう。何故なら……

「面白いものっていうのはいつになったら見られるんですかね」

 自分とコユビさんはかれこれ15分以上、小屋の壁にある隙間すきまながめて座り込んでいたのだった。


「ま、まあもう少しの辛抱しんぼうだ少年。ただ待つということも時には必要なんだ。それに僕がこうして精霊について解説しているじゃないか。十分有意義と言えるだろうと思うけどねぇ。」

「今はどちらかと言うとこの状況の説明をしてほしいんですけど。何を見ようとしているのかさえ分かってないんですから。」

「……え、あれ?そうだったっけ?」

 コユビさんは少しの間だけきょとんとした顔を見せ、それからすぐに「あちゃー」などと言ってひたいを手でおおった。


「いやぁごめんごめん。思い返してみれば碌に教えてなかったかも。どこまで言ってたっけ。」

「どこまでって……えと、パサパサが“埃の精霊”で“精霊の埃”だってところまででした。」

序盤じょばんも序盤だねぇ。でも世間一般でのパサパサの認識っていうと“綺麗だけど汚い不思議な生物”程度だからなあ。」

 何気なくコユビさんが発した言葉は、しかし自分には易々(やすやす)と飲み込める情報ではなかった。綺麗で汚い?ちょっと言っている意味が分からない。


「……えっと、さっき見たパサパサが特別汚れているようには見えなかったんですけど」

「でも埃とかゴミとか平気で食べるよ?」

「うっ」

 コユビさんによって間髪かんはつ入れず投じられた追加情報に、思わず顔をしかめてしまった。それって、つまりゴk……いや、やめよう。


「じゃあパサパサは汚いってことですか?」

「どうだろうね。パサパサが汚れを食べなかったら結果的に汚いままだったんだ。汚れを取り除くなら綺麗とも言えるんじゃないかい?」

「……いや、流石にそれは通らないと思いますけど」

 床を拭いた雑巾が、塵を掃いた箒が、手を拭いたハンカチが、綺麗であるということにはならないだろう。むしろ汚れを肩代わりしている分、元の状態と比較しても汚いと言えるのではないだろうか。

 こちらの意見をうんうんと聞いていたコユビさんは何が面白かったのか、にやりと笑って答えた。


「いやあ、全くもって正解だ。君はなかなかに賢いねぇ。でも少年は一つ重要なことを忘れていないか?パサパサは“精霊”だ。少年は何一つ間違ってないが、精霊であるパサパサには当てはまらないと……」

 そこで一度言葉を区切ったコユビさんは、少し考えてから


「当てはまらないかもしれないし、違うかもしれない。」


 という何とも歯切れの悪い答え方をした。

 人の意見にいなと言っておいて何とも釈然しゃくぜんとしない。胡乱うろんげな目を向けると歯切れの悪い当人は小さく咳払いをした。


「あー、そうだねえ。例えるなら……うん。」


コユビさんは視線をわずかに地面に這わせると、足元に落ちていた一枚の葉っぱを親指と人差し指でつまみ上げた。青々とした葉を頭の高さで見つめ、それからこちらに向けてくるくると回転させて見せた。


「私がパサパサだとするならこの葉っぱの裏表うらおもてが環境の状態ということさ。私の匙加減さじかげんで簡単に入れ替わる。わかるかい?」


 ……全く分からない。

 少なくともパサパサの姿とは結び付かないし、綺麗汚いの議論にどう絡んでくるのかもわからない。

 つまり何一つ分からない。


 思考停止と現実逃避に揺れながらどうにか頭をひねっていると、コユビさんが実に楽しそうに笑っているのが見えてしまった。

 絶妙に分かりにくい解説は意図的だったのだろうか。自分は呆れと諦めを含んだため息とともに口を開いた。


「結局このパサパサって精霊は綺麗なのか、汚いのか。どっちなんですか?」

前回からそれほど経たないうちに投稿できて胸をなでおろしております。作者です。

とはいえ同じ話がもう少しだけ続きます。今回の話に関して言えば、会話している二人が座り込んだまま一歩も動いておりません。本当に旅とは何なのでしょうか?私にもわかりません。

まあ作者の混乱はいいとして、今回は作中の文字について触れさせていただきます。


「間髪入れず」

私なりに調べながら書いてはいますが、この言葉の扱いに大いに迷いました。

読みとしては【かんはつ】【かんぱつ】一応どちらでもいいんだそうです。ただ【かんぱつ】は間違い派が一定数いるようなので今回は【かんはつ】を採用しています。【かんぱつ】派の方、すみません。

さらに「間髪容れず」という書き方もあるようでしたが、こちらは「容れず」が“常用漢字表にない表外読み”らしいということと、「入れず」の方が漢字として分かりやすいと感じたため、採用しておりません。こちらも派閥の方、申し訳ないです。

今回に限らず文章を書くごとに自分の無知さと格闘している状態なので、何か間違いがあった場合都度指摘していただけると助かります。

まあ、まずは忘れてしまった誤字報告機能の見方を思い出さないとなんですけどね……

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― 新着の感想 ―
[一言] かんはつ派とかんぱつ派なんてものがあったなんてびっくりでした!! きのこたけのこ派みたいなものなんでしょうかね〜? 私はいつかに読んだ時のルビで『かんぱつ』と書いてあったのでそう読んでいまし…
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