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りんご 長針 マグカップ

 アイテムボックスの中で新たな扉を見つけて入ってみると、そこはもう一つのアイテムボックスのような空間があった。

 まあアイテムボックスの中で見つけた空間なのだから当然と言えば当然なのだが、隠し扉を見つけたような興奮のまま入ったので少々期待外れだった。

 とはいえ先ほどまでいた空間とはえらい違いである。

 何しろとても整頓されている。この光景を前に確信した。


 ここは他人の空間である。

 もしくはサラが二重人格であるかのどちらかであると。


 整理整頓が行き届いていることもそうだが、部屋の大きさや形がまるで違う。

 先ほどまでいた空間は、あまり天井が高くない直方体の四角い部屋だった。

 それに対し、今いる空間は円柱状で若干狭い。天井が高くて使いにくいということもあるが、単純に空間の体積が明らかに小さいのだ。

 それにここは()()。空間の把握ができないほどではないが、文字を読むなら明かりが欲しいと感じる程度。夕方に明かりをつけていない部屋程度の暗さである。

 これほどまでに違う空間を一人が所持しているだろうか?まずないと思う。

 ということはつまり、今自分は他人のアイテムボックスに入り込んでしまっているのだ、と考えられる。


 …………これ、不法侵入になるのか?

 そもそもアイテムボックスに不法侵入も何もないのか?自分にしてみたら、ほぼ地続きの大地を歩いているようなものだからそんなことを言われても。

 ……だめだ、言い訳になっていない。明らかに空間の境界になっていたドアを開けて入ったのだから。

 ……。

 とりあえず考えても仕方ないので無理やり忘れることにした。

 整った空間内には、矛盾するように思えるが所狭しと物が置かれている。簡単に見渡した限りで多いのは本と、すすけた細かい部品らしきものだった。


 本に手を伸ばして……その手をすぐに引っ込めた。

 他人の空間内にいるということは、下手に物色ぶっしょくしていると本来の使用者と接触するかもしれないと気づいてしまった。下手に触るのはまずいかもしれない。

 だが、どうせ相手からは見えないのだから大丈夫だと思う自分もいる。

 少し迷っていたが、結局本を手に取った。

 観察した方がアイテムボックスの情報を得られると考えたのはもちろんだが、単純に知らない人の持ち物を見てみたいという好奇心に負けてしまった。

 本はサラの持ち物とは違い羊皮紙で作られていた。そのタイトルは……

 ……

 状態学の本だった。

 よく見てみれば積み上げている本は数学や状態学ばかりだった。

 この空間の持ち主はサラと相容あいいれることはないだろう。そう確信し、そっと本を元の位置に戻した。


 気を取り直して今度は細かい部品を拾い上げてみる。大量の部品が何に使われるのかは、完成品がこれまた大量にあったのですぐにわかった。

 時計だ。

 置時計に白いうさぎが持っていそうな懐中時計、無数の針が付いた時間以外を表すであろう物まで様々であった。

 この空間の持ち主は時計職人なのかもしれない。趣味で作るにしては完成度が高すぎる。

 しかし空間内だと壊れているのかそうでないのかの判別がつかない。アイテムボックスの中にあっても時計は時を刻み続けるのだろうか。それとも針が動くことなどありえないのだろうか。

 思い返せば家の中に時計は無いし、サラやコユビさんが持っているのも見たことが無い。

 この世界に時計はないのかと思っていたが、ただ単に高価で手に入らなかったのだろう。

 まあサラのことだから、手に入るほどの資金を持っていたとしても「そんなもの必要ありません」とか言って結局持たないような気もする。


 ……と、時計を手に持ったまま考えすぎてしまった。

 持ち主の手がいつ現れるかもわからないし、何より誤って壊してしまいそうで怖いので時計も元の位置に戻す。


 もうそろそろサラの空間内に戻ろう。そう考え始めた、その時だった。

 恐ろしいものを見つけてしまったのだ。

 数多の完成された時計の影に、それはひっそりとたたずんでいた。


 ……林檎りんごだった。しかも食べかけの。


 ……いや、確かに状態が変わらないってことは腐らないってことだろうけど、食材までアイテムボックスの中に入れるのか?

 たしかに利点は多いと思う。アイテムボックスほど最強の保存場所は他にないだろう。だろうが、空間内にしまうとしても個人単位でだろう。集団でやるにはデメリットしかない。


 例えば集落の食料のすべてを、容量が大きいからと一人のアイテムボックスに集めたとする。その瞬間、集落全員がその一人に生命線を握られることになる。

 一人の気分次第で餓死者が現れ、横暴を止めようにもアイテムボックスの保有者が死んだら食料丸ごと失われるため害することもできない。もはやそんなもの集落として機能しない。一人とその他の奴隷の集まりへの早変わりである。

 もちろんそこまで悲惨な状態にならない場合もあるだろうが、大量の食料をアイテムボックスにしまい込むことはあまりしないだろう。

 その証拠に、以前保存食の不味さをコユビさんが嘆いていた。空間内に食糧をたくわえることが一般的なら、保存食の文化がそもそも存在しないだろうと思う。

 とまあ、そう言ったわけで林檎があることに驚いた。しかも食べかけで、くっきりと歯形が残っているものだから余計に。


 ……いや最後まで食うか捨てるかしろよ。

 もしかして旅の途中であとで食べようとしまい込んだ、とかだろうか。

 だが、アイテムボックスの保有者が時計職人であるという予想が正しければ、サバイバルをするようなことにはならないのではないか?

 林檎以外の食糧も見当たらないし、野宿するような用意があるとは思えない。

 食べかけの林檎だけ丁寧にしまって、野営のための荷物は手で持っている?

 それはただのアホなのでは?

 まったくわからない。


 林檎を手に取ることもできずにいた自分は、思わず頭を抱えていた。

少し間が空いてしまいました。

今回に限らず少し投稿頻度は下がると思います。

その分文章の精査をしっかりできたらなぁ……と思っております。

そう言えば初投稿から一カ月がたちました。……え、旅は?

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