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愛着が死にゆくとき 2

 これは状態学。これも状態学。こっちは数学。あそこにある一際ひときわでかいのも多分状態学。

 

 無造作に放り込まれ、うずたかく積み重なった荷物の山から出るわ出るわ。いろいろな本が大量に発掘されていた。

 基礎的なものから、おそらく大学レベルの開くだけで目眩めまいがするものまで様々であったが、すべて状態学(科学や物理学)か数学に関する本であった。

 その数はすでに二十冊を超えている。しかもすべて紙本。

 この世界の文明のレベルがどれほどかは知らないが、おそらく手書きで書かれているこの本はかなり高価なものではないだろうか。それをこんな乱雑に放置するなんて……あ、また出てきた。

 家の中に本棚があるためそこにしまえばいいものを……。

 百歩譲って本棚に入りきらなかったためにアイテムボックスに突っ込んだならまだ理解できなくもないが、こうも空間内に状態学と数学の本しかないことを考えると、理由は一つだろう。


 “その二つの学問が好きじゃないから”

 


 ………………………………子どもか!!


 いや、気持ちがわからないわけではないのだが。

 自分もこちらの世界についてあまりにも無知だったため、勉強することを余儀なくされたが、元々勉強が好きなわけではない。そのためキライな教科を避けることも理解できるのだが、よりによってサラが勉強を投げ出すようなことをしたのか。

 その姿をまったく想像できない。


 ゴミ山の中からとりあえず本だけを先に抜き出して積み重ねていく。


 そう、ここはゴミの山なのだ。

 もう使うことはないと放り込まれた、ここにあるものはすべて、正しくゴミと言えるだろう。

 それも自身が死ぬまで消えることのない特別なゴミだ。

 自分でも何を言っているかわからないが、本当にいらないものであれば燃やすか、埋めるか、売りに出すかすればいいだろう。

 サラがそれらの労力を惜しむとは思えない。

 そうすることなくアイテムボックスの中に詰め込まれているものは、捨てたいけど捨てられないひどく矛盾したゴミなのだろう。

 愛着があったものか、高価なものだったのか。

 しかしゴミとして捨てられたなら、持ち主からすればそれらの価値はすでに消え失せているのだ。

 それらを考えるとこの空間は、何とも歪なゴミ箱に間違いないのだ。




 空間内に放置されていた本をあらかた見つけ出し、確保した空間に積み上げる作業が終わる。

 その数およそ二百冊。マジか。

 正確に言えば紙本がそのくらいの数なので、動物の皮が使われている本などはまた別にある。つくづく恐ろしい。

 よくもまあ好きでもない本をここまで集めたものだ。彼女の勉強をしようと挑んだ結果の産物なのかもしれない。残念ながら実を結ばなかったようでもあるが。


 あふれる物と積み重なった本を見て、前世の自分の部屋を唐突に思いだす。

 自分が引きこもっていた部屋にはほとんど荷物が無かった。

 パソコン、箪笥たんす、本棚、あとは布団くらいか。

 整理されているように見えなくもないが、至る所にホコリがたまっていて清潔感などはなかった。

 正反対の見た目であるはずのアイテムボックスとかつての自室。その二つを意味もなく重ね合わせて見てしまっていた。


 モノがあふれているがホコリ一つないこのアイテムボックスと、物はないがホコリをかぶった自分のかつての部屋。

 果たして空間内にある物への愛着が強いのはどちらなのだろうか。

 

 ゴミ箱の中でひとり、自嘲気味じちょうぎみに笑うのだった。


苦手な教科はそれだけでやる気が出ないのはサラに共感します。

彼女ほど頑張ることもできないでしょうが。

それでも文理選択である程度、苦手な教科はやらなくて済むように……

あれ、英語君?なんで君は残ってるんだい?

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