オーナーも元勇者
やぁ、田中一郎だ!
異世界から戻ってきた俺は絶好調だったぜ。
何せバイトクビになっていた後に探した新しい職場のオーナーも元勇者だと判明したからだ!
そんな訳で俺たちにしか分からないような話をしようとオーナーの自宅に遊びに来て宅飲みの最中だ。
「だからさ〜俺の行った世界ってのが典型的なファンタジーRPGの世界でよぉ。
ここで沢山の出会いや別れがあって仲間たちとの冒険もあるんだと思ったわけよ。
でもよ、最初に出会った仲間が変な白い生き物でビックリしてさ」
オーナーの話にウンウンと頷く。
仲間人外の世界もあったなぁ〜オーナーの場合は一緒に戦う仲間だったのか。
俺は自分は戦わずに仲間にした魔物を戦わせろって世界だったな。
「で、ピンクと緑の仲間と一緒に魔王を倒して元の世界に戻ってきたんだよ。
あ、これがその時の武器ね」
先輩は何もない空間から剣を取り出した。
さりげなく鑑定すると先輩の行った世界の勇者の剣らしい。
「田中くんも武器とか防具だせんの?
良かったら見せてよ」
「あ、はい。
これですね」
俺はそう言ってアイテムボックスから剣を取り出した。
「へぇ〜これが田中くんのぶ・・・き・・・?」
オーナーの顔が段々と青ざめていく。
「た・・・田中くん、これさ。
鑑定してみたら能力値凄いことになってるしスキルとかも色々付きすぎるくらいに付いてるんだけど?
それに産地も色んな世界の名前がくっついてるけど何なのこれ?
そして、これ持った瞬間に俺のステータスが全部億を超えてるんだけどどういう事?
元々は3桁だったんだけど」
「これは今まで行った世界の技術をフルに使って、各地の伝説の武器や金属も合成しまくったワンオフですね。
それ使わないと勝てない魔王もいたんで最初にその世界に呼ばれなくてラッキーでしたよ」
「へ、へぇ〜そうなんだ。
お、俺もその世界に呼ばれなくてよ、良かったな。
ところで今まで行った世界って・・・?」
「ああ、自分召喚陣呼び寄せる体質らしくてめっちゃ呼ばれるんですよね。
30以上の世界は救ったかな?
あ、ほら今も!」
と俺が言うとコタツの上がピカッと光り魔法陣が現れる。
「まーたか〜飲んでるときくらい遠慮して欲しいんだけど。
あ、オーナーが行ってみます?」
俺はそう尋ねたがオーナーはブンブンと首を振った。
「いや、君が行くべきだと俺は思うな。
休みの間は有給にしておくから気にせずに行ってきなさい」
オーナーの優しい言葉に胸が熱くなる。
「ありがとうございます!
俺行ってきます!!」
そう言って魔法陣に飛び込み転送を待つ。
「あ、おい!この剣忘れてるぞ!」
「それと同じ性能の剣が何本もあるから良かったら貰ってください。
それじゃ行ってきまーす!」
「は?何本もある?
田中くん!ちょっと待って田中くん!!」
オーナーが叫んだのは俺の転送直前であったために良く聞き取れずに俺は再び救済の旅へと向かうのであった。