キラキラ輝く魔法陣
俺の名前は田中一郎。
いま何処にでもあるテンプレな名前だと思ったやつ・・・その通りだ。
俺はそこそこの家に生まれ、そこそこの学歴を納め、そこそこの会社に就職した。
見た目も可もなく不可もなく、身長も高くなく低くもなく。
体重もいわゆる普通だ。
しかし、今の俺はそういう普通から少し外れアルバイトに精を出している。
会社はクビになってしまった。
何でクビになったかって?
今俺の目の前にあるこいつのせいだ。
俺が風呂に入っていると当然床が光り目の前に輝く魔法陣が現れた。
そう・・・異世界召喚の魔法陣だろう。
とりあえず俺は魔法陣を避けてタオルを取り身体を拭く。
そして寝巻きに着替えて寝ることにした。
・・・朝、魔法陣はまだキラキラと輝いていた。
参った・・・今日はバイトの日だ。
こんなものに飛び込んだ日には無断欠勤でまたクビになってしまう。
いや、待て・・・ワンチャン時間が経過しないタイプの魔法陣では無いのか?
昨日からあるということはそうに違いない!
一縷の希望を託し俺は魔法陣を『鑑定』する。
『異世界マジナエールに繋がる魔法陣。
昨日からずっと賢者ワカクナ・イモーンが維持しているがそろそろ死んじゃうかも?
向こうに行っていた時間だけ経過するタイプです』
はぁ〜鑑定するんじゃなかった。
こんなの知ったら放っておけないじゃん。
しかも時間経過するタイプとかクビ確定やん。
しかし、仕方ない。
知ってしまったなら行くしかない。
俺は魔法陣に飛び込む・・・前に装備を変えておかないとな。
今の装備はある世界で魔王の裏にいる存在まで倒したら手に入れた武具で、それを別の世界で+99まで上げ、更に合成のある世界で今までに救った世界の装備品を全てぶち込んだワンオフの逸品だ。
そう・・・俺は異世界に召喚されるのは初めてではない。
この召喚を合わせると通算で20回目になるだろうか。
俺はかつて救ってきた世界で手に入れたアイテムボックスの魔法を使い中を確認する。
うむ・・・死んでも自動で蘇らせてくれる薬が99個。
体力と魔力を回復させてくれる薬が99個。
状態異常回復薬も99個・・・まぁ、最初の世界の時点で状態異常無効のアクセサリーを拾っているから関係ないのだが。
各世界でお金が違うから共通して価値のある宝石や金なんかもゴロゴロ入っている。
なに?それを質屋に持っていけば遊んで暮らせるのではないかって?
何というか、それはダメだろ?
やっぱり人間働かなくちゃいけないし、それは最終手段ということにしている。
さて、装備OK。
道具もOK。
では、行きますか。
俺は段々と輝きを失い始めている魔法陣に飛び込んだ。