【04】 聖女の独り言 01
この世界の勉強をし始めて一ヶ月ほどたったころ、私は学園へ通うことになった。
特に試験も無く、王子様と同じクラスに、転校生として入学した。
それが、ゲーム本編の始まりだった。
最初から王子様と一緒にいたことも大きいが、ゲームと同じように、私は攻略対象者とも、すぐに仲良くなった。
普通に生活しているだけで、ゲームの殆どのイベントが自然に発生したし、ゲームの内容を良く覚えていたので攻略は楽勝だった。
私がゲーム通りの言葉を言えば、彼らはシナリオ通りの答えをくれる。
一言一句違わない言葉や行動に、私は何度も笑いそうになった。
私は最初から、メインの王子様を狙っていた。
最初に紹介されたと言うこともあるが、十七歳の私が知っているあっちの世界の話を、王子様はとてつもなく優しい瞳で見つめながら興味深く真剣に聞いてくれるのだ。
ときには褒めてくれるし、嫌がらせで泣きそうになると抱きしめて慰めてくれた。
むこうの世界では男の子となんてちょっと話す位だった私には、それがとても新鮮で嬉しかった。
ましてやあっちの世界では、テレビでもお目にかかれないような美形だから、夢中になるのに時間はかからなかった。
ゲームをやっていた時はそう思わなかったけど、今の私は王子様さえいれば良かった。
だから、他の攻略対象者たちとはある程度近付いた後は、必要以上の接触を避けた。
この世界の女の子とも仲良くなりたかったからだ。
最初から、女子生徒達からの嫌がらせはあった。それはゲーム通りの嫌がらせだったので、上手く回避することで被害はなかった。
彼女たちは、私が王子様以外の人とあまり話さなくなると、少しずつ声をかけてくれるようになった。
私は仲良くなった男子学生達に婚約者や恋人を大事にしてほしいとお願いしたり、フリーであれば女の子たちとの仲を取り持ったりした。
これはとても上手くいった。
女の子の友達も出来たし、嫌がらせも無くなり、学園の皆が優しくしてくれるようになった。
友達と呼べる人も出来た。
王子様は優しいし、一緒にいるのは楽しいけれど、たまには女の子といろんな話をしたかったから、これは本当にうれしかった。
そうしているうちに、だんだんと人の輪は広がって行き、私はいつのまにか学園の中心人物になっていた。
私はこの世界で、楽しく過ごしていた。
だから、その頃にはもうあの女の人のことも、王子様に婚約者がいるということも、すっかり忘れていた。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
不定期更新になりますが
また次作もよろしくお願いします。