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【01】 悪役令嬢と友人のお茶会

すべて会話文で出来ています。

地の文はありません。


どっかのお屋敷の応接室。

元悪役令嬢と、友人のお茶会を

壁際で見守る侍女になって聞き耳を立てている。

そんなシチュエーションでお楽しみください。











「キスをするとね、あの人、デブでちょっと不細工になるのよ」


「え?」


「だからね、キスをすると、メタボの脂っぽいおじさんになっちゃうの」


「旦那さんのことよね?」


「そうよ。他に私がキスする人なんていないでしょ」


「……そうよね。最近、婚前交渉と不倫の相談が多くて、貞淑って言葉を忘れていたわ。ごめんなさい」


「いいのよ。今の社交界の潮流は奔放だもの。私が古いのよ。で、ほら私、結婚式の時、貴女を呼ばなかったでしょ」


「えぇ、旦那さんの地位で初婚なのに結婚式をしないんだって不思議に思っていたのよ。王家も良く許したなとも。なにより、あんなに招待客でいっぱいの結婚式やるって言っていた貴女がよく我慢したわね」


「我慢じゃないわ。よく考えたら私、結婚式に招待できる人っていなかったのよ。それにさすがに、誓いのキスをしたら旦那様がデブでちょっと不細工に変身するのを招待客に見せるのは嫌だったし」


「……デブでちょっと不細工って、どの程度なの?」


「どの程度って、んー、陛下くらい?」


「……それは、なんとも言えないわね。言ったら不敬になりそう」


「その言葉が陛下にも旦那様にも失礼だと思うけど」


「ははは。で、キスするとデブになるのは何でなの?」


「それがね、なんでも、呪いなんですって」


「呪い?」


「えぇ、呪いだっていうのよ。よく分からないけど」


「何か悪い事でもしたの? 本人とか、家族とか、御先祖様とか……」


「さぁ。細かいことは何度聞いても教えてくれないの。まぁ私は部外者だから仕方がないとは思うけど」


「部外者じゃないでしょう。神と陛下が認めた妻なんだし」


「認めたのは陛下だけよ。誓いのキスをしてないもの。神さまも、旦那様も認めてないと思うわ」


「キス、したことないの?」


「キスはしたわよ。だから旦那様がデブで不細工になるって知っているんじゃない」


「そうよね、で、戻す時はどうするの?」


「時間が経つと戻るみたい。よく知らないけれど、うわーってどこかへ逃げて行って、暫くすると戻った状態で現れるもの」


「へぇ。それはまた面白いわね」


「えぇ、本当に面白いのよ。普通はキスするといい男になるものじゃない? 【真実の愛】が呪いを撥ね退けるとかって。それがキスするとデブで不細工になるって、ないわよね」


「ないけど、いい男がキスされて不細工になるって、なんか本当に呪いっぽいかも」


「……そうね、そう言われれば本当に呪いっぽいわね。じゃあ、【真実の愛】があれば変身しないのかしら? もしそうなら、確かに、私のキスは【真実の愛】じゃないものね。変身する筈だわ」


「これから真実になるんじゃない?」


「ならないわよ」


「そんなにはっきり言わなくても、分からないことでしょう。人の気持ちなんて」


「旦那様とは陛下の命令での結婚ですもの。お互い愛があるかと言えば、ないでしょ。だいたい、顔合わせの時の第一声が、「命令だからお前なんかと結婚するんだ」ですもの」


「ははは……そんなこと言う人、本当にいるんだ」


「いたわよ。二人目よ、後でじっくり見ていってちょうだい。よく観察すると、とっても面白いわよ」


「でも、そんなこと言われて、よく我慢したわね」


「我慢するわけないじゃない。言ってやったわよ。それはこっちのセリフだって」


「そうよね、それでこそ貴女だわ。で?」


「初めから、そんな状態よ。愛なんてありえないわ。それどころか、旦那様がよく私なんかが側にいるのを我慢しているとは思うけど」


「そこからどうしてキスすることになったのよ」


「それがねぇ、不可抗力だったのよね。旦那様が階段でつまづいて、その拍子にちゅってね。そしたらボンッっていって、旦那様がメタボ親父になったのよ。びっくりしたわ、流石に。だっていい男が影も形も無くなっちゃうんだもの。それからは、普通にキスするようになったけど、いまだにちゅってやるだけなのよ」


「……ところで、それって、ほっぺにちゅもダメなの?」


「あ。それは大丈夫だったわ。手とか頬でまであんなになってたら、大変だものね」


「……」

「……」


「ん? あー、じゃあ、額とかにしてもらえばよかったんだ! それでもいいんだものね。誓いのキス! ……やっぱり騙されたのね、私」


「結婚式の前にもうキスしてたの?」


「一回目は不可抗力だもの……でも、結婚式前はそれだけよ。だから手や頬のキスが大丈夫なんて思い当たらなかったんじゃない。……まぁ、その話はもういいわ。いつかやり直しするから」


「結婚式のやり直しはないんじゃない、流石に」


「そう?」


「一応したんでしょう、結婚式」


「したわね。……列席者もドレスも指輪も花束もキスもなかったけど」


「え、それだと何をするの?」


「誓いの言葉を言って、サインして、終了よ。一応教会よ。応接室だったけど」


「それはそれで、ひどいわね」


「そうかもね。でもかえってよかったかも。ほら、もうすぐ三年でしょう? だからそのうち離婚だと思うのよね」


「え? ちょっとまって。それって、まだ真っ白ってこと?」


「そうよ。ほら、そう言うことをするときって、やっぱりキスするでしょ? するとデブになっちゃうでしょ。結構大きくなるのよね、胸とかお腹とか匂いとか。で、その自分のお腹を見るとダメなんだって。キスしないようにして試してみたこともあるんだけど、興奮してくるとやっぱりキスしたくなっちゃうらしいのよね。だから未遂」


「そのままやっちゃえないの?」


「私もそう思うわ。やっちゃえばいいって。私はキスしようがしまいが、旦那様がデブだろうがそのままだろうが、旦那様が旦那様なら、全然気にしないんだけど。毎回、泣きながら逃げて行くのよね」


「気にしないって……それはそれで、」


「あら、いい男だって、不細工だって見慣れれば同じよ。不細工ばっかり見ていて、急にいい男を見ればそりゃあびっくりするけど。毎日見ていたらそれが普通になるのよ。不細工もデブもいい男も見慣れれば大した違いはないわ。でも、旦那様は嫌みたいなのよね。やっぱりそう言うことはキスから始めないといけないって言うのよ」


「私もそうありたいと思うけど?」


「そうかしら? (ピー)わけじゃないんだから、さっさと(ピー)ちゃえば終わるのよ? どうせ(ピー)のは私だけだろうし…… 政略結婚だもの、無理していちゃいちゃしなくてもいいと思うのよね。後継ぎさえできれば、もうしなくてもいいだろうし。離婚も早くできそうでしょ? 愛がないからこそ、ささっと終わらせた方がいいと思うんだけど、ダメなんだって。キスしないとできないって」


「……そんな身も蓋もない」


「えーでも、「○○○」とか「○○○」とか(○には該当すると思われる小説のタイトルをご自由に入れてください)だと、最初からキスも何も無く、それだけとかあるじゃない。お前には憎しみしかない、だから○○しかやらないとか、○○だけで十分だみたいなことを言って」


「それは小説だからでしょう。本当にやったら犯罪よ」


「あら、そう? 王子妃教育よりは綺麗だと思うけど。でね、じゃあ外で勉強してきてって言うと、それもいやだって言うのよ。そういうお姉さんたちってちょっと高いけど、キスしなくてもできるよう、手とり足とり教えてくれるって、マルコも言っているのに」


「マルコって?」


「旦那様の家令よ。で、いつまでも出来ないんじゃあしょうがないから、とりあえず触れ合うことに慣れることから始めようって話になって、お出かけしてみたり、旦那様の膝に乗ってみたり、キスをしないで触りあったりとかしてみたんだけど。それももう嫌だって言うのよ。旦那様が少し我慢してくれさえすればすぐ終わるのに。それも出来ないとなると、もう私じゃ無理でしょ。要は私とはやりたくないってことだもの」


「飛躍しすぎじゃない?」


「あら、私とやりたければ、自分の姿なんて関係ないでしょう? 私とやるより、自分の姿の方が大事だってことじゃない?」


「それは……」


「で、タイミングがいいことに、最近あの子が、旦那様の周りをウロウロしているのよね」


「あの子って、まさか?」


「そう、私から婚約者を奪っていったあの子よ」


「ちょ、ちょっとそれって、例の聖女様のこと?」


「そうよ。この間のパーティーからちょこちょこ見かけるわ。学園にいた時と同じで、偶然を装っていたけど、家まで押し掛けて偶然はないと思うのよ。だから、今度はきっと旦那様を狙っているんだと思うのよね」


「いいの?」


「いいも何も、旦那様次第でしょ。でも、私はいいかなって思ってる」


「いいって何がいいの? また黙ってるつもり?」


「私がなに言ったって無駄だもの。私がやることはすべて悪なのよ。あの人たちにとっては。それに私、あの子みたいに男の人に安らぎを与える、だっけ? そういうのきっと出来ないのよ。だから、もしあの子と旦那様が、殿下の時みたいになったら、それはそれでいいかなって。あの子ならきっと旦那様の呪いも解いてくれるだろうし、あの子が旦那様を受け入れるなら、きっと旦那様もなりふり構わずやっちゃえると思うのよね」


「やっちゃえる……でも、あの子もう殿下の婚約者でしょ。流石にないんじゃない?」


「そうかしら、あの子が望めばなんでも叶うんじゃないかしら? あの時だって、かなりの数の男性に囲まれていても大丈夫だったもの。一人くらい増えてもあの人たちなら平気でしょ。旦那様は王家の女性たちの大事な人だから、あの子と一緒にお願いすれば前みたいに上手くいく筈よ。それに、さっきも言ったけど、そろそろ三年だもの」


「本気なの?」


「えぇ、旦那様が言わないなら、私から王家に願い出るつもり。三年子なきは去れって言うでしょ。何にしても、旦那様には後継ぎが必要だもの。旦那様が私を嫌だって言うんだから、私だけのせいでもないし、その線で離婚をお願いしようと思うの。恋愛も、結婚ももう充分だわ」


「充分って、貴女。恋愛したことないじゃない」


「そう……だけど、もういいわ。夢はもう見ないわ」


「……別れてどうするの? 家には戻れないでしょ?」


「戻れないわね。今更、修道院も無理だし、毒でも自殺でも死んだりしたら、旦那様が病みそうだし。そこは王家も分かっていると思う。だから狙っているのは、どっかの悪評のある人の後妻か他国の側室なんだけど」


「そんな簡単にあるわけないでしょ」


「それがね、最近、ほらどこだっけ、南の方の国と国交再開したでしょ。それで第三王女を嫁にやるって話が出てるのよね」


「え、でも第三王女って、騎士団の人ともうできちゃってるわよね? 他国の王族との結婚なら清いままじゃないとダメなんじゃない?」


「それよ。だから白い結婚での離婚なら、私、行けそうじゃない? 王女がかわいそうだって言われてる話だし、皆に嫌われてる私なら王家も実家ももろ手を上げて、旦那様との離婚を認めてくれると思うのよね。この国にいるのもいやだし、変にこの国にいたら、嫌われ者のところに嫁に行ってもまたあの子が現れそうだもの」


「まぁ、そうね。きっと邪魔しに行くわね。で、その結婚は何番目位なの?」


「十五番目らしいわよ。良くない? あまり目もかけられず、憎まれず、ゆっくりできそうかなと。平民が一番いいけど、それこそ王家とかあの子の信者にすぐ殺されそうだもの。王家に少し恩を売っとけば流石に他国で殺されることも無いでしょ。あっちの国の人には殺されるかもしれないけど、この国で殺されるよりましだし、それはそれでいいのよ?」


「旦那さんにはそのこと、もう言ったの?」


「言わないわよ。王家から命令してもらった方がお互い嫌な思いもしなくていいでしょ。王家だってそれくらいしてくれないと」


「王家は知っているの?」


「知っていると思うわ。旦那様の美談にしたけど私の悪口はしっかり教えてたから、絶対に私に手を出さないって王家は思ってる」


「そうじゃなく、そもそも旦那さんが変身することを王家が知っているかってことよ」


「知っているでしょ。だから私が嫁に選ばれたのよ」


「考えすぎ、だと思うけど」


「そうかしら。旦那様がもういい年なのに浮いた話すらないって社交界でも有名だったじゃない。王家としても大切な旦那様に悪評が立つのが許せなくなっていたと思うのよね」


「何で王家がそんなこと」


「あら、貴女、知らなかったの? 旦那様ってまるで男版あの子みたいなのよ。王家とか高位貴族の女子に大人気で、彼女たちが旦那様をあの子の取り巻きみたいに保護してるの」


「まさか……そんなこと」


「あら、本当よ。殿下たちと同じで、知らないのは本人たちだけ。で、その彼女たちが旦那様のために、一人身でいてもいい理由を作るため私が選ばれたの」


「何言っているの。そんなわけないじゃない」


「半分くらいは想像だけど」


「なんだ、びっくりした。想像力ありすぎよ」


「でも考えてみてよ。旦那様って見た目は良いし、魔力も剣の腕もあり、仕事もできる。家柄も良く、王家の覚えもめでたい。変身するのだって、最初からそれ込みで相手を選べば、誰だっていいはずでしょう? それを何でわざわざ私を嫁にもらう必要があるの? それも美談にして」


「美談よね。確かに、美談だわ。旦那さんが貴女を望んだことになっているものね。世間では」


「そう。なのに第一声は「命令だからお前なんかと結婚するんだ」ですもの。だから、考えちゃったのよね。旦那様に吊り合うそこそこの地位があり、旦那様が手を出さなくても、離婚されても文句が出なくて、いざとなったら切り捨てることが出来るちょうどいい女じゃない私って、って」


「ちょうど……いいわね。確かに」


「でしょ。それに、私が死のうが、処刑されようが、殺されようが、他国に嫁に出されようが、民衆はやっぱり悪女だったんだなって、悪女が罰せられただけって思うんだから。王家も民衆も旦那様もウィンウィンよ。それどころか旦那様には悪女を助けたのに騙されたかわいそうなって人って世評と、悪女に裏切られたせいで傷心したと言う結婚しなくてもいい理由もできるのよ。いいことづくしよ」


「……貴女にはちっとも良くない」


「ふふ。ありがとう。貴女だけよ。そう言ってくれるのは。でももういいのよ。もう、なにもかも面倒なの。誰かのために生きたり動いたりするのも、悪女と言われるのも、あの子の引き立て役になるのも。でもそうは言えないでしょう? 言ったらまた我儘だと言われるもの。でも、私にとって悪いことでも、あの人たちにとって良いことなら、私の願いも叶うのよ」


「ねぇ、本当にそれでいいの? 貴女は、旦那さんのことを好きなんでしょう」


「貴女は、そう思う?」


「思うわよ。昔の貴女と今の貴女は全然違う。殿下と一緒にいた時は、そんな風に楽しそうじゃなかった。それって旦那さんのおかげでしょう?」


「そうね。そうかもしれない。殿下とは全然違うわ。私のことを嫌いなのに、話を聞いてくれるし、手も握ってくれるし、キスもしてくれる……逃げて行くけど。でも、旦那様がそれももう嫌だって言うんだし、私ももう嫌なのよ。またいなくなるかもしれない人に思いを向けるのも、裏切られるのももうたくさん」


「その気持ち、旦那さんには言ってみたら? そうすれば」


「簡単に言わないで。三年頑張ったわ。嫌いだって言われているのによ。……旦那様も頑張ってはくれたけど、無理だったんだもの、しょうがないのよ」


「でも、私は貴女の話を聞いていると、旦那さんだってまんざらじゃないって思うんだけど」


「同情してくれているのよ。顔合わせの日に大ゲンカして、洗い浚い叫んじゃったから」


「大ゲンカ?」


「いっぱいいっぱいだったのよ。殿下に婚約破棄されてすぐで、私ばっかりなんでって思ったら泣き叫んでたらしいわ」


「旦那さんはその時どうしてたの?」


「さぁ。最初は叫び返されたと思うけど、気が付いたら抱っこされて背中をなでられていて……たぶんずっと私の話を聞いてくれてたんじゃなかしら」


「……えーっと」


「何?」


「いえ。なんでもない。けど、やっぱり、離婚の話は旦那さんにした方がいいんじゃない?」


「そうかしら」


「旦那さんが貴女を本当に嫌いなら、すぐ離婚に応じるんじゃない?」


「……それも嫌なのよ」


「はい?」


「旦那様が離婚に応じることは間違いないから、直接言おうとも思ったのよ。でもすぐに分かったって言われるのも、なんか嫌なの」


「……多分、離婚するなんて言わないと思うけど」


「え? 今何か言った?」


「ううんなにも。なら、いつ頃出て行くつもりなの?」


「三年が過ぎたらすぐがいいと思っているわ。旦那様の運命の相手がどこかにいるなら、なるべく早く妻の座は空けたほうがいいでしょう?」


「運命なんてそんな簡単に見つからないわよ、普通」


「それはそうよ。でも、旦那様は圧倒的に出会いが少ないもの。結婚を考えなくてよくなれば、パーティーだって出やすくなると思うのよね。そうすれば出会いもあるじゃない。……あの子なら一番いいのでしょうけど、ね」


「私は、そうは思わないけど」


「何故? あの子は皆に愛される存在だわ」


「男に、よ」


「あら、学園では女性にも好かれていたわよ。最後なんて殆どの人の心を掌握していたじゃない?」


「あれは、誰も王家に逆らえなかっただけよ」


「そうかもしれないわね。でも、殿下たちはあの子のおかげで救われた。だからきっと旦那様も救ってくれると思うのよ。世の中のすべての女に嫌われてても、旦那様が好きならそれが一番でしょう」


「貴女ねぇ、それを決めるのは旦那さんなんだから」


「分かっているけど、あの子に関わった男性は皆【真実の愛】を見つけたって言うもの。きっと旦那様もすぐに見つけられるわ。私じゃないのは確実だもの、なら、わざわざ旦那様の運命の相手が見つかるのを待つ必要はないでしょ?」


「それは、そう、だけど」


「でしょう? それに、もし離婚する前に、あの子が旦那様の呪いを解いたらって考えると……」


「……ねぇ、もし、よ。もし、旦那さんの呪いが解けて、デブで不細工なのが本当の姿だったら、貴女どうする?」


「えっ! えぇっ? ……そんな風に考えたことなかったわ。そうよね。そういうこともあるのよね。うーんでも、別れたらもう関係ないから、それはどうでもいいわ」


「……聞き方を変えるわ。もし今旦那さんが元に戻らなくなったらどうする?」


「さっきも言ったと思うけど、旦那様がデブだろうがそのままだろうが、旦那様が旦那様なら、私は全然気にしないわよ」


「あの子はどうかしらね?」


「それこそ私には関係ないことよ。好きにしたらいいわ」


「そんなものなの?」


「そんなものよ。私は仮初の花嫁なの。でももし、旦那様が元に戻らなくなったらきっと……」


「きっと?」


「……すぐに、追い出されると、思う……わ……!?」


「え?」


「……やばい、やばいわ。あの子が旦那様に接触する前に逃げなくちゃ」


「ちょっと、急にどうしたの?」


「ありがとう貴方のおかげで、王家の考えが分かったわ。私、そこまで考えてなかった」


「だから、どうしたの?」


「旦那様の呪いが解けたら、きっとまた断罪される!」


「何言ってるの? 貴方は何もしていないでしょ?」


「そんなの関係ないでしょ? きっとあの子と旦那様の仲に嫉妬して呪いをかけたって言われるわ! あぁ、こんなことしていられない。せっかく来てくれたのにごめんなさい。私、急用が出来たから、席を外すわ」


「ちょっとまって、落ち着いて」


「落ち着いてなんていられないわ。えーっと、マルコを呼ぶから、気をつけて帰ってちょうだい。じゃあ、落ち着いたら、連絡、しない方がいいわね。とにかく、また」


「ちょ、ちょっと! って……行っちゃった。相変わらず行動力はあるのね。うー、これは旦那さんに会っていくべきかしら、ね?」











最後まで読んでくださりありがとうございました。


不定期更新になりますが

また次作もよろしくお願いします。

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