占依存症3
ご要望通り水晶を置き、
そして水晶を見るフリをし、
私は「客」を見る。
「娘さんに良い相手が・・・・・・ということですが、
・・・・・・ご心配なさらなくて良いですよ。
生まれた星、名前共に協力な守護神に守られておりますし、
自分で掴んでいく強さ、持っていますね。
ですから、時々あなたが占いに頼りすぎていると思っていますね」
「エエ、そうです。でも、私心配で・・・・・・。
親が娘を思うのは悪いことではないでしょう?」
「ええ」
ですが行き過ぎは問題ですよって言葉を飲み込む。
言いたいことを、そのままぶつけるわけにはいかない。
「自慢の娘なんです。私にはできすぎたくらいの」
「ご立派さ、伝わってきます。
娘さんの名前、生まれる場所、すべて占師にみてもらったのですね」
水晶の横で、紙に図を書けばすぐにわかる。
きれいな図が描ける場合はたいていそうだ。
これには出産にも占師を立ち合わせたのだろう。
見る。
情景が浮かぶ。その人の顔・話し方を聞けば、
かなりの部分が見えるし、わかる。
田舎にいるのも、占師に薦められたようだ。
ほんの少し占っただけなのに、私にも「信頼」の目。
ふせ目がちがった目が、輝いている。
「――今までに誰にも注意されませんでした?
あなたに依存傾向があると、占師に」
「それは・・・・・・。はい、いえっ・・・・・・されていません」
嘘だ。「その時」も大体わかったがふせておく。
この言う、言わないの判断が本当に大変だ。
「保険証提示してもらえますか? ――書いていないということは
口頭だと思いますが、注意されているはずです。
占依存症です。
これから半年間、占いをしてもらうことを禁じます。
どうしても必要な場合は、第1級資格保持者の所へ行って下さい。
万が一我慢できない場合はリハビリセンターもあります」
「ちょ、ちょっと待って下さい! 私はそんな注意は・・・・・・
娘には、それはされたことあります。
ですが、占師の方に注意されたことはありません。
いきなり占い禁止だなんて、そんな・・・・・・」
「半年です。娘さんもそれを望んでいると思います。
あなたが今の状態から抜け出すことで、
娘さんは幸せの2文字がより身近なものとなります」
実は、キレイな図に一つのゆがみ、
娘の場合は「母」と出た。
方位や色といったものではなく、
身内がでる場合も少なくない。
「水晶に・・・・・・そうでていますか?」
見るフリだけしていた水晶を今日初めてマジマジとみつめる。
最初しっかりと見ていたわけではないので、違いがよくわからない。
でも――――
「ええ」
軽い嘘を忍ばせ、そっと鉛筆を置く。