自動筆記者5
「余計なこと聞いてしまって、ごめんなさい。
あなたの身上調査に来たわけじゃないのにね。
私も今は、弟子はいないわ。
その分、もしかしたら迷惑かけること多いかもしれないけど、
しばらくの間、よろしくお願いします」
「こちらこそ。それ程大きな所じゃないので、不自由だと思いますが、
よろしくお願いしますね」
簡単な書類をやり取りし、私はあてがわれた部屋へ移動した。
掃除は良いって言ったのに、きれいに片付けてある。
もともときれいな部屋なんだけどね。
”さすらいの占師”になって結構経つけど、
ここまでの歓迎は初めてかもしれない。
王宮での日々を思い出す。
私の捨てた生活。
確かにこの街は都会だけど、
他の占いの館ではここまで歓迎されなかったよ。絶対。
改めてマーガレット・マイルの人柄の良さについて考えた。
ノック音がして、前にこの館に来たらしい
第1級占師の実態を告げた子が入ってきた。
「先生、お茶を持ってきました」
その言葉に悶絶しそうになる。
「ねえ、先生は勘弁。名前で呼んで。リラって呼び捨てでいいからさ」
「えっ、でも・・・・・・」
名前を訊くと「ジュニ」と名乗った女の子は困っている。
「・・・・・・リラ様で良いですか?」
「様もやめて」
うーん、私って意地悪?
でも、様もイヤ。
ジュニはしばらく逡巡すると
「リラさん、なら良いですよね?」
と言った。
うん、それならOK。
ちなみにマーガレットのことを何て呼んでいるか訊くと
「エムエム占師」とか「マイル責任者」とからしい。
マーガレットと呼ばれるのはあまり好きではないみたい。
でも、私が彼女を呼ぶとしたら名前で、かな。
意地悪じゃなく、あまり親しげに呼べないでしょ。
私は一応居候みたいなもんだし、ね。