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彼の手を引いて、あちこちと回った。
もしかしたら気疲れさせてしまったのかもしれない。
「そっそんなことないよ! オレ、すっごく楽しかったし! 水族館なんて久し振りだったし」
あたふたと手と首を振る彼が、やっぱり可愛く見える。
「ねっ、じゃあこうしましょ?」
「えっ?」
わたしは足を組みなおして、膝をぽんぽんと叩いた。
「膝枕させて。それで気にしないことにするから」
「ええっ!?」
わたしの突然の申し出に、彼は眼を丸くした。
「ひっ膝枕って…」
「気にすることないわよ。周りの人でも結構やっている人いるから」
彼はわたしの指さした方向を見た。
小さな子供を膝枕するお母さん、わたし達のようなカップルの膝枕。
わりとありがちな光景になっている。
「なので、さっ、どうぞ」
おいで、と両腕を伸ばす。
「うっ…。よっよろしくお願いします…」
消え入りそうな声で言って、彼はゆっくりわたしの方に倒れてきた。
彼の頭を抱えて、ゆっくりと膝に乗せる。
「どう? 膝心地は?」
「きっ気持ち良いです」
顔が真っ赤になっている。
頭を撫でてあげると、さらに真っ赤。




