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恐る恐る中を覗くと、1人の少年が傷だらけで倒れていた。
わたしはハンカチを水道でぬらし、少年に駆け寄った。
「大丈夫? キミ、しっかりして」
声をかけながら、顔を拭いてあげた。
そして買ってきたミネラルウォーターを飲ませてあげると、少年は意識を取り戻した。
「…あれ? ここは…どこだ?」
「公園よ。あなた、倒れてたんだから」
汚れている顔や、手を拭きながら、ざっと全身を見た。
…大きなケガはしてなさそうだけど、病院には行った方がいいだろう。
「…ワケありじゃなかったら、救急車呼ぶけど?」
「いや…いい。いつものことだから」
声変わりをしたばかりの声で呟かれると、胸が痛かった。
「あなた…美夜のコね? でもいくら美夜の学生だからって、ムチャなケンカは感心しないわよ」
頭を起こし、少しずつ水を飲ませると、少年はだんだん意識がハッキリしてきたようだ。
軽く頭を振り、ゆっくりと立ち上がる。
「説教はセンコーだけで、カンベン…」
「ガキが何言ってんのよ」
そう言いつつも、ふらつく少年の体を支えた。
「ムリな時は誰かを頼りなさい。そのことは大人でも子供でも関係無いんだから」
少年の目が、真っ直ぐにわたしを見る。
…何て強い目をしているコだろう。
きっと将来、この少年は強くなる。
誰よりも、何よりも。
「本当の強さの意味、間違えないで。弱さは恥じゃないことを、知って」
「…うるせーよ」
吐き捨てるように言って、少年はわたしから離れて、一人で歩き出した。




