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―数十分後。
「はっ!」
彼は現実に帰ってきた。
「おかえり」
わたしは苦笑した。
「ごっゴメン! ぼ~っとしてて…!」
「気にしないで。わたしもぼ~とあなたを見てたから」
「えっ…えぇ?」
真っ赤になる彼の手を、今度は引っ張った。
「もうすぐショーがはじまるの。アシカとかイルカとか芸達者なのよ。見に行きましょ?」
「うっうん」
ショーを見た後、売店でおみやげを買った。
二人とも、お揃いのイルカのケータイストラップ。
水色ガラスのイルカに、青と水色のビーズがキレイで可愛いんだけど…。
「良いの? 可愛過ぎない? お友達に何か言われるんじゃ…」
「良いよ、言われても」
そう言って、彼は穏やかな表情でケータイにストラップを付ける。
「言われたら、ちゃんと言い返す。『彼女とお揃いなんだ』って」
少し頬を染めながら言ってくれた彼を見て、胸があったかくなるのを感じた。
コレは…ヤバイ。
本気になりそう…。




