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「部下から報告がありまして。四獣神の問題ならば、オレ等も関係ありますからねぇ。大至急、理事長とふっ飛んで来てみたらまあ…」
春市さんは周囲を見回し、苦笑した。
先代四獣神には、さすがの現役の四獣神も頭が上がらないみたいだ。
「ひなお嬢」
秋観さんが声をかけてきたので、わたしはそっちを見た。
…白雨は相変わらず踏まれたままだ。
「このたびは弟子が不始末をして、本当に悪かった。白雨はオレが直々に鍛え直すから、今回のこと、水に流してくんねーかな?」
「それが陽菜子お嬢様に謝罪する態度ですか? しかも厚かましく、要求まで押し付けて」
「夏目クンの言う通りですよ、秋観。もうちょっと、誠意を見せたらどうです?」
夏目さんと春市さんが、呆れた視線を秋観さんに向けた。
「誠意? 誠意って、コレか?」
足元の白雨を見下ろすと、ニヤっと笑った。
あっ、コレはヤバイ!
と思った瞬間、
ドカッ ゲシッ
「うごっ」
白雨を蹴り始めた。
顔や腹、足も満遍なく。
「止めて! 冬丘さん!」
わたしの声に、近くにいた冬丘さんはすぐに秋観さんを羽交い絞めにした。
「やめろ、紅葉。お嬢様が引いてる」
「おっと…。お嬢の目には悪かったか」
そう言って嫌な笑みをわたしに向ける。
…相変わらずイヤなヤツ。




