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「それじゃあ、一つだけ、約束してくれる?」
「はいっ! 何でも!」
「わたしのことを、深く知ろうとしないで」
「…えっ?」
彼の笑顔が固まった。
「わたしが言うこと以上のことを、知ろうとしないでほしいの。えっと、ホラ。詮索しないでほしいってことよ」
束縛を嫌う女の子が使う言葉だ。
説得力があるはず。
「そっそれならOKです! オレも知られたくないことがありますから!」
…ハッキリ言ったな。この子。
思いっきり自分が怪しいってことを。
「それでも良いなら、付き合ってくださるんですよね?」
「まあ…良いケド」
「いっ…」
あっ、ヤバイ!
わたしはとっさに耳を塞いで彼から離れた。
「ヤッター!」
ビリビリッと鼓膜が震えた。
「うっ…」
…予想通りの展開。
彼…正義は満面の笑顔で、素直に喜んでいた。
その様子を見て、まいっかなんて思ってしまった。
…お互いにとんでもない秘密を抱えていることを知らずに。




