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そしてお母さんに電話した。
「あら、どうしたの?」
「あっあのね!」
簡単に事情を説明すると、お母さんはゆっくりと答えた。
「分かったわ。お父さんはこっちで引き止めておくから、行ってらっしゃい」
「ありがと!」
わたしはすぐに下におりた。
すると廊下にお母さんがいて、笑顔でリビングに入っていく。
―今のうちだ!
父さんはお母さんにベタ惚れだから、意識がお母さんに向いているうちに、玄関を出る。
「正義くん!」
「ひなさん!」
道路に出ると、すぐに正義くんが駆けつけてくれた。
だから思いっきり彼に抱きついた。
「ゴメンなさい! …ホントはずっと会いたかったの」
「オレも…ゴメン。ひなさんを困らせるって分かってて、来ちゃった」
「でもよくウチが分かったわね」
「あっ、ゴメン。実は…ひなさんをつけてたんだ」
「…尾行したってこと?」
「ホント、ゴメン! でも一回だけだから!」
彼の顔が暗闇でも分かるぐらい、真っ赤に染まった。
…ヤレヤレ。
尾行には気をつけていたつもりだったんだけどな。
知っている人だと、気もゆるんでしまうのかな。
それが…正義くんだと、特に。




