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「ふぅん。あっ、ねぇ、交換しない? わたし、ピーチも食べてみたいな」
「ふぇっ? あっ、うん」
彼女は恐る恐る半分を差し出してきた。
そして交換して、食べる。
「うん♪ ピーチも美味しいわね」
「りっリンゴも美味しいね」
二人でニコニコしながら、間食。
「あっ、お金払うね」
慌ててお財布を取り出す彼女。
「良いわよ。今日はわたしのオゴリ」
「でも…」
「代わりに今度ここで会ったら、クレープ奢ってね」
「えっ…それって…」
わたしはカバンを持って、立ち上がった。
「わたしは光輪学院・高等部2年の月花陽菜子」
「あっあたしは美夜学院・高等部1年の火祇朱李」
「それじゃあ後輩クン、またね!」
わたしは笑顔で手を振り、駆け出した。
…ヤレヤレ。
今日は早く家に帰ろうと思っていたのに。
思いのほか、遅くなってしまった。
ケータイを開くと、正義くんからのメールがたくさん来ていた。
「会いたいな…」
会いたいけど…会えない。
言いたいけど、言えない。
…いつまでガマンできるのかな?




