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「まあまあ、落ち着いて」
わたしは学生の肩をポンポン叩いた。
「ちょっとわたしに見せてみて」
「…ああ」
学生は面食らっていたが、素直に避けてくれた。
わたしはコイン入り口を覗き込んだ。
別に何かが詰まっているワケじゃなさそうだ。
でもお金を入れても、機械は動いていない。
それにお金が入った表示もされていない。
コイン返却のスイッチを押しても、無反応。
「…ホントはお金なんて、入れてないんじゃないの?」
「ねぇ。ああやって、ジュースを盗もうとしているんじゃ…」
近くにいた主婦二人組みが、こちらを窺いながら言った。
「何だと! このババアども!」
「やめなって」
学生の腕を掴みながら、わたしはもう片方の手で財布を取り出した。
「入れたのは120円?」
「ああ、ピッタリ入れた」
「それじゃ、多分原因は…」
わたしは十円玉を取り出し、力を入れながらコイン入り口に投入した。
ガッコン!
コインが落ちる音がして、自販機が動き出した。
表示も130円になっている。
「何飲もうとしてたの?」
「…コーラ」
わたしはコーラのボタンを押す。
ガコンッ




