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「こう言ってはなんですが、夜上クン一人ならばボク等がいますから、問題は無いに等しい。ですがあなたまでいるとなると、話は別です」
「女一人加えただけで傾くような状態ならば、わたしは正義くんの方が心配だわ」
「何だと!」
芙蓉が机を叩いて立ち上がったものだから、周囲にいた人達が一斉に沈黙し、こちらを見た。
「芙蓉、やめなさい。ボク等はあくまで説得しに来たんです。それに素直に頷かないことは、想定済みのはずです」
「だけどこのアマっ!」
「やめなさい」
あくまでも静かな翠麻の声。
芙蓉は顔を真っ赤にしながらも、再び席に座る。
「すみません、月花さん。あなたの言うことはもっともです」
翠麻は頭を下げてきた。
「ですがボク等は彼を全力で守りたいんです。余計なことには気を取られずに」
翠麻の目と言葉に、鋭さが宿った。
「ですから、お願いします。一時でいいんです。問題が解決するまで、彼には会わないでください」
そう言って翠麻は頭を下げてきて…続いて芙蓉も渋々といった表情で、頭を下げた。
「………」
わたしは黙ってケータイを握り締めた。
開けば彼の安らかな寝顔が見える。
なのに今は…遠く感じる。
「…問題が片付けば、連絡してくれる?」
わたしの声に、二人は驚いて顔を上げた。
「聞き入れて…もらえるんですか?」
「本当に一時ならね。…翠麻くん、あなたのケータイナンバー、教えて」
「はっはい! もちろん!」
翠麻の表情に喜びの色が差した。
そしてケータイナンバーを交換して、わたし達は店を出た。
「今日はお時間をとらせてしまい、本当にすみませんでした」
「…問題は一刻も早く片付ける。アンタはそれまで大人しくしててくれ」
二人はもう一度わたしに頭を下げて、街の中に歩いて行った。
わたしはふらっ…と歩き出した。
…美夜が出てくるのだから、一般人であるわたしは関わらない方が良いのだろう。
そう、わたしは一般人なんだから…。




