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このままじゃ…名前を連呼されかねないな。
わたしはため息をついて、塀を再び飛び越えた。
「うおっ」
「わっ!」
芙蓉楓と翠麻藤矢は突然現れたわたしに、目を丸くした。
「―こんにちは。はじめまして。私立光輪学院・高等部2年の月花陽菜子です」
わたしは服装と髪を直しながら言った。
「わたしに何のご用? 美夜の人に呼び出されるいわれは無かったと思うけど…」
「アンタには無くても、俺達にはあるんだよ!」
「やめなさい、楓。すみませんね、月花さん。ちょっとお時間、よろしいですか?」
彼の案内で、街中のファーストフードに入った。
学生が多くいる中、彼等の制服は目立っていた。
…いろんな意味で。
「突然呼び出してすみません。すぐに済ませますので」
「ええ、それで内容は?」
「実はあなたの身に、危険が迫っていることをお知らせにきました」
「…はい?」
わたしはしばし考え…。
「美夜の人に、ケンカを売った覚えは無いんですけど…」
「ええ、あなたは、ね」
翠麻藤矢は意味ありげに笑った。
「あなたではなく…その、夜上正義くん絡みです」
思わぬ名前に、わたしは目を丸くした。
「彼がっ…美夜の人とトラブルでも?」
「まあそんなところです」




