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暖かな午後の陽差しと柔らかな風、そして満腹のせいで彼の眼が次第に閉じていった。
やがて寝息まで聞こえてくる。
わたしは笑顔で彼の寝顔を見つめた。
…可愛いな、やっぱり。
男の子とまともに付き合ったのは、コレがはじめて。
彼のことは、まだお母さんにしか言っていない。
父さんは…いろいろな意味で危険だから、しばらくは黙っていよう。
服やお弁当の中身のことは、今日までうんと悩んだ。
けれど楽しかった。
彼の喜んでくれる顔を思い浮かべるだけで、わたしも嬉しくなる。
自覚し始めている。
…彼を好きになっていることを。
けれどわたしの抱えている秘密を知れば、彼はきっと去ってしまう。
そのことを考えれば…あまり深入りしない方が良い。
傷付く事を覚悟で告白を受け入れたけど、まさかこんなに気持ちが溢れるなんて…。
「…完璧に予想外」
ふと呟き、ため息一つ。
だけど今だけは、彼の穏やかな寝顔を見ていられる。
そう…今だけは。




