1章 箱の中
映画やアニメかなんかで良くある場面。
大量の敵や強大な敵から仲間を守る為、
一人残り戦うあの場面。
そして一人残る人はこう言う。
「ここは俺が抑えておく、お前達は先に行け」
はわぁ...なんていい台詞なのだろうか。
こんな台詞を一度でもいいから言ってみたい。
けども、そんな台詞を言える場面は
非日常でも無い限り殆ど皆無だろう。
しかしネタとしてなら言える。
今いいのを思い付いた。たぶん使える。
流行るかもしれない...自信ありだ。
これをやったら隣りの親友は驚くだろうか?
この箱の中に居る他の人はどんな反応をするの
だろう。
なんとなくだけど笑ってくれそうな気がする。
くれないにしてもきっと良い空気になる気がする。
やるぞ!私は今、
このネタを言えそうな場所に居る。
この長方形の箱の中の操作パネルの前だ。
もちろん操作パネルの前に居るからと言って、
好き放題に操作していいわけでは無い。
他の人に迷惑がかかるからね。
でも、あるタイミングに限り好き放題しても
大丈夫なはずだ。
そしてそのタイミングはもうすぐやってくる。
この箱が今居る位置をランプで教えている
今は4だ。このランプが1になるその時が
計画を実行に移す時だ!
思い付きだけど計画の方が格好良いので
計画と言いました。
気にしちゃだめです。
ランプの表示がカウントダウンの様に減っていく。
3
2
いっ...
きた!その時だ!
私は操作パネルのボタンを押して言った。
「ここは私が押さえておきます、
皆さんは先に行って下さい!!」
その瞬間、一瞬空気が凍った。
隣りに居た親友はサッと降りて行った。
急に体が熱くなってきた。
恥ずかしさと後悔がこみ上げてくる。
一人ひとりと皆降りていく。
苦笑いしてたり、お礼を言われたりする度に
どんどん熱くなっていった。
やらなきゃ良かった〜
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい〜
恥ずかしぬ〜
心の中で叫んだ。
本当はすぐにでも走って逃走したかった。
でも、やってしまった事は仕方ない。
ふざけはしたけど一応親切でしているのだ
最後の一人が降りるまで我慢しよう。
そう思った矢先最後の一人が言った。
「後は任せろ、お前も早く降りろ」
その瞬間、私はとても冷静になった。
さっきの自分を客観的見るとこんな感じだったんだ。
これはとてもイタい。
そしてこの男はなんだ?
助け舟でも出したつもりなのだろうか?
正直、なんかドヤ顔っぽくなってるし
腹が立つ。
もういいや
恥ずかしいし、なんか腹立つし
こいつに八つ当たりしてから降りよう。
私はこいつと...あと自分に向けて言った。
「なんですかそれ?
恥ずかしいだけなんで辞めた方が良いですよ。」
男は驚いて
「ええっ?!ああぁ...」
言葉を遮る様にブザーが鳴り響いた。
いつまでもボタンを押していたからだろう
早く閉めろと急かされたのだ。
私はサッと降り、男は中に乗ったまま、また上へと上がって行った。
なにか言っていた様に見えたけど...
「まっ、いっか。早く優ちゃんとこ行こっと」
そう呟いてから辺りを見渡した。
向こうの方で手をこっちに向かって振ってる
優ちゃんの姿を見つけた。
私は少し駆け足でその場から逃れるように
優ちゃんの元へと向かった。
「恥ずかしくて熱くなったからアイスクリーム食べに行こうよ!」
と言う私の提案を優ちゃんは
「いいよ。私も巻き添えで少し熱くなってたし」
と笑いながらOKしてくれた。
その後、道中EVでの事を話しながら歩く。
「そう言えば優ちゃん私が言った後すぐ降りたよね。」
「ははは〜、他人のふりして降りちゃった。
でも、もっちーが悪いんだよー
いきなり変な事言うから〜」
「ごめ〜ん。もうしません。」
「そう言えば最後なんか話してたよね?」
「あ。見てたのー?なんか私のネタにのってきた人がいて、そのままなんか言いながらまた上に上がってったのー」
初投稿作品
1箇所でも面白いと思って貰えればと思います。