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「ってめぇ!調子こいてんじゃねぇぞ!」
三下モブ感以下略がまるで馬鹿の一つ覚えみたいにずっと同じことを言う。うん、さっきはちょっとした冗談で家の壁がどうのこうのと言っていたが本当に崩れてきてるしあんた汗かいてるから汚いのね。
だから取り敢えず…
「触らないで。汚い。」
「なっ……………!」
私は三下モブ感以下略の腕の一番綺麗そうなところに目星をつけて掴んだ。あ、勿論、地力だよ?
「ックソ!っっはなっ、せっ!」
「はいはい。暴れないで……………警察呼ぶよ?」
三下モブ感以下略が暴れるが、異世界でも化け物扱いだった私の地力を振りほどけるわけがない。そして、私は少しの威圧を混じらせ三下モブ感以下略を黙らせる。私の雰囲気が変わったのに段々と気付いてきた三下モブ感以下略は顔を文字通り真っ白にさせ膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪えている。だが、私はなかなか感心している。てっきり崩れ落ちて無様に漏らして気絶するのかと思っていたが、三下モブ感以下略でも耐えるのだなと思って。まぁ、流石に三下モブ感以下略でもヤクザってところかな。ただ、家の敷地で流石に大の男の汚物を処理したくはなかったので、耐えてくれて助かった。あ、三下モブ感以下略はもう解放してさっき脱兎の如く立派に逃げたよ。うん、小学生が遊んで作った泥の溜まりで盛大にこけてたけどどうでも良いしね。実際他人事だし。指差されて笑われてるのを想像すると、うん、なかなかに面白いね。
「はぁ~、面接に行こっかな。あの人はもう来ないね。でも、そろそろモブ感が半端ない兄貴が出てきそうだよね。いきなり大物が出てきたらどうしよっかな?」
その時の私は例え大物が出てきたとしても何とでもなると思っていた。しかし、自分から近づいていっていたとは露にも思わなかった。
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「あ、事務仕事って良いな。なんか、私って地味なことが好きなんだよね。だから地味だって言われてるんだけどね。ってか、好みのせいで地味度が上がってる訳じゃないよね?うん、そうだね。そうそう。」
しかし、地味なことが好きなのは本当のことだし、それで強くなれたんだから別に悪いことばかりじゃないんだよね。
そうなのだ。実際に強くなると言うことはかなり地味な作業のようなものだった。誰もがある程度強くなればやめていってしまう魔力制御は一番リラックス出来る姿勢で何十分も魔力を体の中で練り続けると言う、他人からしたら苦行のようなものだった。そして、誰もが怠るような魔力制御を椿は異世界から帰っても毎日怠らずに行っている。理由は明白。それをすれば魔法を使用するときの魔力消費が抑えられるのと、魔力を練っていると美肌効果が続いているからだ。何と魔力制御は体の老廃物を魔力が掠め取ってくれてそのまま魔法を使用すると老廃物を魔法として消費できると言う素晴らしい効果があったのだ。勿論、椿はこの事を公開していない。新たな大発見とも言える事なのだが、周りに美人が増えると貴族が更に増長すると思ったのでやめておいたのだ。嫌いなやつがそれをやって綺麗になるのも腹立たしいので。あいつらは未だ消えぬニキビと体の不調に悩み続けるだろう!あははははははは!まぁ、魔力制御をすると魔力量も少しずつではあるが増えるのだし、病気にもなりにくいし、ポーションも効きやすくて良いことづくめだしね!それでも、教えてやらんがな!
「あぁ、こんな時にも異世界関連は私を増長させ苦しめる。うん、放置放棄が一番だね。まぁ、この事務に決定かな。よし、電話電話。」
ピピピピ
華麗に電話機のボタンを押す。(普通に押しているだけ)
プルルルル プルルルル プルル ガチャ
『はい、こちら○○金融会社です。』
電話に応対したのは詐欺師によくありそうな優しそうな声の(滅茶苦茶失礼)男性が出た。
「あっ、もしもし町田と申します。あの、その、求人広告でアルバイトを募集していると書いてあったので、電話で連絡して、面接をすると…………」
『あっはい。そうですね。では、面接日時を決めたいのですが、明日の14時か来週の14時ですね。どういたしますか?』
「あっ、明日で。はい。」
『はい。では、明日の14時前には一階の受付に来ていただくようにお願いします。』
「はい、わかりました。失礼します。」
ガチャ
ふぅ~
一仕事終えたぜ。キリッ
一人で寂しくキメ顔をする。
え?何でヤクザが来たときよりおどおどしているかって?しょうがないじゃん!コミュ障なんだよ!なんか悪いか!特に相手が丁寧な態度だと、挙動不審になっちゃうんだよ。うう~。態度の悪いやつには普通に出来るんだけどな。
だからボッチなんだよ。