ユーラキ国王暗殺任務前編
〜ユーラキ国王暗殺計画3日前〜
ユーラキ国王ナイーザ2世はある事を企んでいた。
シュマデの権力者を攫う、もしくは殺すこと。
「精鋭達を招集するまで後4日ほどかかるとのことです。」
ナイーザの側近の男がそう報告した。
ユーラキの精鋭達は皆他の国に散らばっており、近い国にいる者もいれば遠い国にいる者もいる。
「そうか…」
ナイーザは、魔法大国シュマデを滅ぼす事が一番の狙いであった。
シュマデはとても強かった。先代の王達も何度も挑んできたが、毎々惨敗してきた。
だけど今はちがう…。この国にも優秀な者達はたくさんいる。シュマデにだって勝てるはずだ。
シュマデの有力な者を攫い身代金を踏んだくりたいが、それは二の次だ。
想像しただけで笑いが止まらない。ユーラキが頂点に、いやこのナイーザ2世が、この世界を支配する、そんな日は遠くない。
四日後が楽しみだ。
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ユーラキ国王暗殺計画任務執行から15分が経過した。
王城は時間が時間なだけに人がいない。せいぜい数十人の警備がいるくらいだ。
王城の中に入りすぐ目の前の階段を登った。ある程度の位置は把握している。
この城の最上階の広場の奥に王の部屋があるはずだ。
行く途中に何度か警備に会ったが、気づかれる前に始末した。時計を確認すると任務遂行してから早、二十分が経過していた。
あまり長居できないため素早く終わしたい。
この階の上が恐らく最上階だ。恐らくまだ精鋭達も揃っていないはずだ。何としてもユーラキが動く前に阻止せねば。
幸いにも、今この城には大して強いやつはいない。念の為、キルアが使う監視結界には程遠いが、似たような物を使う。なんとか王城全体は飲み込めるようだ。
キルアはシュマデ全域に巨大な結界を貼っている。防護結界などではなく、監視結界と移動結界だ。
監視結界は、シュマデのすべてを見ることができる。誰かを探したりもできる。キルアはこれで日々シュマデを監視している。
移動結界は結界内のどこでも移動できる。これは世間には知られておらず、知っているのは俺とキルアとハステルトと上層部、あとキルアの秘書くらいだ。
キルアは移動結界も国全域に張っているため、シュマデ国内どこにでも行ける。
シュマデはあまり面積は大きくないというのもあるが。
最上階の階段が見えた。
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ルシナは今日もいつもどおり学校で勉強して帰るところだった。
教科書で重たい鞄を背負いながら校門を出ると、見知らぬ男がやってきた。
「やあ、君がルシナくんかな?」
「は…はい。 私に何か用ですか…?」
「ちよっと付き合って貰えるかな?」
知らない男は近くの喫茶店へ案内した。変な人には見えなかったし、何かあったら逃げればいい。
喫茶店の店員から席を案内され、男に座ってくれと合図され腰を下ろす。
「自己紹介をしていなかったね。俺はキルアだ。国に関係してるお仕事をしているとだけは言っておこう。」
「それで、話って何ですか…?」
キルアという男は、「好きなもの頼んでくれ」とメニュー表を差し出した。
私はミルクティーを頼み、彼はブラックを頼んだ。
「話というのはね…、先日君はライザーと会っただろう?」
「ええ、彼に男達から助けられました…」
「その彼とコンビを組んでほしい。簡単に言うと、君は彼から学び、共に戦って欲しいんだ。」
「そ、そんなこと急に言われても…。 大体彼は何者なんですか?」
「組めばわかる。組まないのであればそれは教えられない。」
キルアは笑みを浮かべ「勿論君次第」と言った。
「組んで何をすればいいんですか?」
「一つには絞れないが、言うとしたら任務を遂行し成功させる…だな。」
「… なんで私がなんですか…?」
「あいつを君と組ませると面白いことになると思ってね。あ、勿論君の成長も兼ねてだよ。」
しばしの間沈黙が流れる。ようやく考えがまとまり、ミルクティーを一口飲んでこう告げた。
「考えさせてください。急に言われてどうこうできることでは無いので。」
「ああ…そう言うと思っていたよ。考えがまとまったらまた教えてくれ。いずれまた会いに来るだろう…」
「ただ… これは君の魔術の腕は今よりもずっと成長するとだけは断言しよう。」
キルアはコーヒーを飲み干し、レジを済ませ店を出ていった。
(今よりずっと成長する…かー)
私も店を出てまっすぐ家に帰った。