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始まりの儀式

「はぁ.......。」


今日三回目の溜め息を吐き出す。


どうしたらいいんでしょう? どうしたら.......。


「大丈夫? メル、どうしても嫌なら、明日入学式行かなくてもいいのよ?」


「いいえ、ちゃんと入学式は行きます。 すみません、お母様にまで迷惑を掛けてしまって。」


「いいのよ。 それに、迷惑なんかじゃないわ。」


そう言ってお母様が微笑む。

お母様はいつも私の心配をしてくれているので、出来れば迷惑は掛けたくないのだけれど....。


私はこの伯爵家の一人娘、メルティーナ・ラリオンと申します。 

顔は、まあ中の中の中位でございます。

ほんとにどこにでもいそうな顔立ち。

紙は薄いピンクゴールドで、目は.......。


ま、まあ、それはよしとして、本題に入りましょう。

実は私、明日国立聖魔術学園に入ることになったのですが.....、はぁ、結局説明する事になってしまいましたが、その学校の入学式で、精霊召喚を行うのです。

それで私がぶち当たった問題ですが。

私、生まれながらにして、聖紋を瞳に宿していないのです。

聖紋と言うのは、全国民が瞳に宿しているという紋様の事です。

その紋様は精霊と人間を繋ぐ架け橋のようなもので、火の聖紋や、水の聖紋などと、人によって様々です。

そして、聖紋によって召喚される精霊も変わってくるのですが.......。


私には、生まれながらに聖紋がなかったのです。


そこにあったのはなんのへんてつもない青空色の瞳。


以来、ずっと私は周りの人からは距離を置かれてしまいました。

まあ、たまに可愛いらしいカエルが机の中に入っていたり、何故か雑巾が椅子に置かれていたので、窓掃除などに使いましたが。


きっと、誰かがぼっちな私をきずかってくれたのでしょう。


それはさておき、どうしましょう。


明日から学校ですが、私に聖紋はありません。

つまり、精霊が召喚されないということです。

これではきっと噂になって、また距離を置かれてしまうかもしれません。


「はぁ...。」


そう考えると憂鬱で、溜め息がまたでてしまいました。







***********************









「ついに、ついに.....。」


来ちゃいました~~。


はぁ。 今私はちょうど学園の物々しい黒い学門の前で突っ立っております。


桜が大変綺麗でございますね~。


ほら、あそこには見たこともないようなお城もとい国立魔法学園がございます。

しかも、その上には虹色のケバケバしい惑星が浮かんでおり、何がそんなに良いんだか。

因みにあの惑星は学園長が浮かばせており、あの惑星からは魔力が溢れ出しているそうです。


石造りの道の学道を通って行くと、学園の入り口の所で何やら人だかりが出来ておりました。

なんでしょう?


「よっしゃゃゃーーーーー!!!!!」


「やったーーーーーー!!!!」


凄い叫び声が聞こえてきますが。


人だかりに近寄っていくとその中心には、女の人が立っておりました。

ただの女の人ではありません。 ピンクの髪に、特徴的な白い看護帽子には、学園特有の星のマークがついており、ゆるふわな感じの可愛い服を着こなしているのですが、背中には羽が、そして、頭には羊のような角が生えております。


確か、天使という種族だったと思います。


「それでは、まだクジを引いていない人は、私の箱から選んでくださいねぇ~。」


優しいそうな天使さんで、手にはなにやら四角箱を持っています。

どうやら、あそこからクジを引くみたいですね。


「はい、どうぞ!」


「あ、ありがとうございます。」


天使さんの微笑みに若干押されつつ、クジを引きます。

出たのは、6666という数字でした。

この数字は、いったい何を意味しているのでしょう?


「え~と、それでは、皆さん引き終わったと思います。

そのクジに書かれている番号は、これから、授業などでのパートナーになる方の番号です。

それぞれ、クジは反応しますので、お早めにパートナーさんを見つけてあげてくださいねぇ~。」


と、言われたが.....。


目の前にいた。


「よろしくね。 私、エルフのリリアナです。」


そのエルフの女の子は、流石にエルフだけあって、とてと可愛いというよりは、美しい顔立ちをしていた。

耳も、長くて、柔らかなミルクティー色の髪が腰元まで伸びている。

そして、白いドレスを短くしたような服に、ピンクのカチューシャを着けていて、お人形さんっぽい。


「初めてまして。 えっと、メルティーナ・ラリオンです。」


「確か、この後、精霊召喚の儀式を学堂でするみたいだよ、楽しみね。」


「そ、そうだね.....。」


どうしよう、このあと精霊召喚の儀式あるんだ。

精霊様、現れてくれないかな.....。



「はぁ~い、皆さんちゅうも~く。」


学堂に天使さんの声が響きわたる。


見上げると、教壇の所に小柄の女の子?が立っていた。

かろうじて女の子だと分かったのは、赤い深紅のドレスを着ているからだろう。だが、それ以外は分からない。

輪郭すらはっきりと認識出来ないのだ。


「あれは、恐らく認識阻害の魔法を用いているのでしょう。」


横から、冷静かつ、的確なリリアナちゃんの声が飛んでくる。

なるほど、確かに此処は魔法学園だ、学園の人が魔法を使っていてもおかしくない。


「え~と、この方が学園長でぇす。

 と言うワケで、学園長先生が精霊召喚の魔法陣をつくるので、一列に並んでくださ~い。」


そう天使さんが言った。そして、小柄な学園長が、両手をあげる。

その瞬間。教壇の前の所に青い魔法陣が浮かび上がり、生徒達からどよめきが起きた。


「大丈夫? メルティーナちゃん、顔が真っ青だけど。」


「ああ、うん、大丈夫。 ちょっと緊張してるだけだから。」


本当は、ちょっと怖くって、手や足から力が抜けてきてるけど、大丈夫、大丈夫。



..........リリアナちゃん、もし精霊が出ないって分かったら、私に、距離とか置いちゃうのかな....。


そう思うと、やっぱり怖いや。


多分。リリアナちゃん、私の目に聖紋が無いことにきずいてないし。


「メルティーナちゃん、そろそろ私達の順番だよ?」


「う、うん....。」


やっぱり、足が震える。


「次~、エルフ族のリリアナさぁ~ん。」


「はい。」


リリアナちゃんが魔法陣の前に立つ。

すると、その瞬間。 魔法陣の幾何学模様が動き出し、その魔法陣から、青白い光が溢れだそし、少しずつなにかを形どっていく。


『ワンッ!!』


「ほぇ?」


現れたのは、わんちゃん?だった。

白に薄い緑が混じっていて、狼に近い。


「あなたが私の精霊ですね。 私の手足として、これからは私に付き従うのですよ。」


『ワンッ!!』


あ、リリアナちゃん、手、噛まれた......。


「え~と、どうやら、リリアナさんの精霊は、フェンリルのようですね。相性も良いようで安心しました。」


あれで、相性が良いんだ......。


相性って不思議。


「次は~、メルティーナさんですね。 こちらへ!」


天使さんが手招きします。


心を落ち着けようとしても、なかなか落ち着かない......。


一歩ずつ魔法陣に近ずいて行きます。

強張った顔が天使さんに見られていないか心配です...。



何とか魔法陣の前の前、つまり、一歩前までやって来ました。

この一歩を踏み出したら、私はまた.......。


「大丈夫よ。精霊は、とっても優しいから。」


天使さんは、私が精霊と会う事に緊張して足を踏み出せないのだろうと、きずかってくれます。


あと、一歩...、あと、一歩....。



「えいっ!」


「ふぇ!?」


後ろから可愛い声で『えいっ!』と聞こえた瞬間。

私は一歩踏み出してしまいました。


『キュィィィイイイ!!!!』


そして、魔法陣は何故かけたたましく鳴り響き、煙を発しています。


も、もしかして、壊しちゃった!?


次の瞬間....。


『ボフッッッ!!』


辺り一面が煙に包まれました。


「ケホッ、ゴホッ!」


「ガハッ、ゴホッ、ゴホッ!」


真っ白な世界の中で、周りから咳をする声がしたので、皆も巻き込まれたのでしょう。

目がしみるので、僅かに目を細めてみていると、やっぱり、煙以外は見えません。


その時....、


「風の刃【リシスペア】」


美しい声がした途端、すーっと煙が引いて行きます。

どうやら、天使さんが手から風魔法を放ったようで、手には風が渦巻いています。


「どうやら、魔法陣のこしょ.........」


天使さんが皆に何か言おうとして、恐らく故障したのだと言おうとしたのだと思いますが、ある一点を見つめて、大きく目を見開きました。


私も目で天使さんの視線を追うと....、




天使さんがいました。



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