KOOL
「なぁ、まる」
「なぁー。」
「なぁーってば。」
「な…『しつこい。』」
〜KOOL
(きーぷ おんりー わん らぶ!)〜
「なぁー、何書いてんの?」
『…』
「なぁーってば。シカト?」
『…』
「なぁ、まるまるまるまるまるまるまるまるまるまるまるま…『いい加減怒るよ。』る。」
よく晴れた木曜日。
見上げた空には、雲はひとつもなくて、風がそよそよ気持ちいい。
こんな日には、屋上だ!
って事で、美術セットを持って屋上へ。
(今度のコンクールで入賞したら、パフェおごってくれるんだって!)
天気は良好!
絵の具も新品!
(昨日美術部からもらった)
イメージもバツグン!
ただ、ひとつ納得がいかないのはコイツ。
さっきから、あたしの横でなぁなぁうるさいコイツ。
『何でいんの。』
「お前が授業サボってんの見えたから。」
『いや、サボりとか人聞き悪いこと言わないで。』
「お前がサボるなら、俺もサボる。」
いやいや、意味がわからない。
コイツは隣の席の佐久間 光。
噂によれば、結構モテてるらしい。
(こないだ田中さんが言ってた!)
八股だか九股だか忘れたけど、かなりのプレイボーイ。
(これは吉田さん?いや、前田さんかな?)
とりあえず、世間ではモテてるらしい。
「…なぁー、ひま。」
『…』
「なぁーってば。」
『…』
(本当にしつこい)
「…いやぁー、今日はいい天気だ!」
佐久間はんーっと、両手を空に伸ばす。
『…』
(お前はサラリーマンのおっさんか。)
「…古丸 ゆか!」
『…?!』
フルネームで呼ばれた事に吃驚して、顔を上げると、
目の前にはアホ丸出しな満面の笑みを浮かべたプレイボーイ。
『なっ…!?』
ちゅーっ
音で例えるなら、こんな感じ。
佐久間がドアップになったと思ったら、あたしの唇に柔らかい触感。
『…!?…っ、ちょっと!』
「あれ?お顔が真っ赤っかですよ、ツンデレちゃん!」
ごちそーさんでぇしたっ!って言って、ルンルンで帰る背中を、あたしはただ呆然として見てるだけで。
暖かい春の日差しと、唇に残ったあなたの体温が、あたしの顔を赤くさせる。
これが、ヤツの手口なんだと思いながらも、どんどんヤツの色に染まってくの。
(何書いてるかなんて分かってた。)
(ただ、話したかっただけ。)
きーぷ
おんりー
わん
らぶ!
(この愛を貫き通して)
-END-