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 1話 『死』

はじめまして、学生アマチュア小説家の諒です。

物語を初めて書きました。

おかしなところも多いと思います。

なので、その都度ご指摘お願いします。

感想も待っています。

これからよろしくお願いします。


 辺りは死一色に染まっていた。

 死体が放つ異臭は空間そのものを穢していくなか、俺は茜色に輝く穢れ無き空を見上げていた。


 体が重い。


 俺は魔物だけではなく前線で共に戦った仲間たちの死体の山、それも10体20体どころではなく3桁は優に超えている山に弱々しく身を預けている。


 もうここから一歩も動ける気がしない。

 それもそのはずだ。


 なにせ、全身に痛々しい大小様々な生傷があり、極め付けは脇腹を抉られ大腸らしきものが出てきている。

 当然、脇腹からは大量の血が流れ出ていてそこそこの大きさの血溜まりができていた。

 とっくに死んでいてもおかしくない量だ。


 心残りは無いとは口が裂けても言えないが、死というものはこちらの都合などお構い無しにやって来るもので抗いようのない仕方ないことなのだ。

 死を受け入れた俺の体は少しずつ死体へと変わり始めた。


 『人を導く光が失われる時、闇を打ち払う新たな希望が光を灯すだろう。』 


 俺はふと、昔聞いた婆さんの最後の予言を思い出していた。

 人を導く光とは大袈裟だが、つまり俺が死ぬ時に英雄様が現れるってことだ。

 これまでの婆さんの予言はよく当たってきた。


 俺が生き残ってこれたのも予言のおかげと言っても過言では無いが、流石今回は当たるとは思えない。

 何故なら、俺の周辺には生きている人、もしかしたら生き物さえいないかもしれない。


 そして、その俺も感傷に浸るだけで動くことができないからだ。


 あぁ、楽しかった。


 あぁ、悲しかった。


 あぁ、嬉しかった。


 あぁ、悔しかった。


 今、俺の中は様々な感情でいっぱいになっている。


 (眠くなって来たなぁ・・・そろそろか。)


 瞼が重くなり、意識が薄らいでいく。


「・・・アラン団長?」


 透き通るようなきれいな声が俺を現実へと引き戻した。

 瞼を開きそこにいたのは、いるはずもない白髪の少女だった。

 だが見間違えるはずがない、少女は俺たちの娘なのだから。


 『たち』というのには理由がある。


少女は赤ん坊の頃に基地の前に捨てられていた。


 それを俺たち全団員でまるで自分の娘のように、どこの嫁に出しても恥ずかしいどころか胸を張って生きていけるように大切に育ててきた自慢の娘だ。


 しいて心配事をあげれば、十歳の少女でありながら大人顔負けの戦闘能力を持ち、大人顔負けの指揮能力を持つ小隊長であることぐらいだ。


「・・・エレン、どうしてここにいる、ほかのやつらはどうした」


 普通なら団員であるエレンがここにいるのにおかしいなことはないが、今回は違う。

 戦いが始まる直前、今回の戦いはこちら側の負け戦というのがすぐに分かり俺は時間稼ぎのため最低限必要な人数だけを残して撤退させた。


 そのなかにエレンもいたはずなのだ。


「私の隊をのぞいてみんなはしっかり逃げました。・・・それよりも、その怪我です。何があったんですか」


 そういうと彼女は脇腹の傷を診始めた。

 彼女は戦士であると同時に優秀な治癒士でもあるが、多分無理だろう。


「“ハイヒール”」


「よせ。どうせ治らん。それより、なぜお前「少し黙っててください!」」


 そういうと緑色の液体、ポーションを振りかけた。

 それもそこそこ高位のものだ。

 おかげで少し意識がはっきりしてきた。


「ちょっ、5級ポーションだろ。俺みたいな死に損ないなんかに使わずもっと大事な時にとっとげ」


 ポーションは1級~7級のランクがある。

 その中の5級だと低いほうに見えるかもしれないがそれは違う。

 1級、2級と言っているが人が作れるのは今のところ4級までで、しかもその4級を作れる人がこの世に 4人しかいないため、実質5級が最高位のようなものなのだ。


 だが、実質最高位であっても所詮は5級、意味がないものは意味がないのだ。

 性能的にはきれいな折れ方をした骨折が限界だ。


「今がその時です!あなたは私が必ず助けます。だから、だから、絶対死なないでください」


 彼女は死から目を背けるために必死に抗っていた。

 本当は無駄だと分かっているはずだ。


 周りが見えなくなり始めた彼女の頭に俺はそっと手を添えた。


「ありがとな。もう十分だ、もう無理するな」


 子供をあやすようにできるだけ、やさしく語りかけた。

 実際に子供なのだ、このぐらいが普通だろう。


「でも、でも、このままじゃアラン団長が死んじゃいます」


 エレンは10歳にして死の怖さを知っているし、俺が死ぬことも分かっている。

 だから、慰めなんてものは無意味だ。


「ああ、俺は死ぬだろうな。・・・だからエレン、お前に託したいものがある」


 今にも溢れ出そうだった涙が治まり、今度はボケーとした顔でこちらを見つめてきた。


「”汝、我が求めに応じて今ここに現れたまえ『ファヌエル』”」


 俺は残っていた魔力を使い、召喚魔法の呪文を唱えた。

 すると、目の前の空間が歪み、そこから1体の天使が現れた。


「確かエレンは初めてだったな。こいつは俺の契約相手のファヌエル、希望の天使だ、そして俺の相棒だ。・・・ファヌエル、突然で悪いが今すぐエレンと契約してくれないか」


 ファヌエルに問いかけると少し顔色が曇った。


「・・・アレンよ、本当によいのか」


 ファヌエルは希望の天使だけあってとても優しい。

 契約とは魂同士の繋がりを作ることであり、天使は同時に1人しか契約できない。

 もし、2人目の契約をしようものなら1人目の契約が無理やり解除される。


 そして、無理やりの契約解除はとてつもない痛みが生じる。

 中にはその痛みで死んでしまった者のいるそうだ。

 ファヌエルはそのことを気にしている。


 それなら、俺が死んでからでもいいんじゃないかと考えるやつもいるんじゃないかと思うが、こうするのには理由がある。

 天使たちの再契約の間、一時的にだが天使の魂を介して他人との魂の繋がりができる。

 それを利用して、今回の場合はエレンに俺の力を譲渡することができる。

 

 やってもやらなくても、どっちみち俺はすぐに死ぬのだ、ならば可愛い娘の力になって死にたい。

 俺は言葉にはしなかったができるだけ力強く頷いた。


「よかろう。“我が魂に刻む、汝の命尽きるその時まで我が力は汝のものである。汝の魂に刻め・・・”」


 契約の呪文が唱えられていく。

 俺の持っている力を余すことなく流し込む。


「エレン、そろそろ限界だ。これまでありがとな」


 エレンがその言葉を聞くとついに泣き出したしまった。


「泣くな・・・。いいかよく聞けよ。俺はいつも胸を張れと言ってきたはずだ。それは今だって変わらない。だからエレン、胸を張れ。そして笑ってくれ」

 

 エレンは涙を流しながら、俺のために必死に笑ってみせた。


「・・・そうだ、それでいい」


 そして今度こそ俺の意識は無へと還っていく。


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