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勇者の相棒は森のクマさん  作者: タローラモ
第4章 狙われた獣王国
90/127

90 その日は静かに過ぎていき

お待たせしました。



「美女にしか見えないだろ?

…男なんだぜ」


「…知ってるよチクショウ」


 獣王のオッサンの計らいで豪勢な食事を終えたあと、噂のゼノン・ルクソドールさんに会ったのだが…見てくれは童話に出てくるような『人魚姫』のようなヒトだった。

 鮮やかな光沢が眩しいスカイブルーの髪は緩やかに波をうち、ほっそりとした姿、髪に近い色の尾びれ。ローブの上から海竜の鱗の鎧を着ているため『戦乙女』の二つ名が似合いそうではある。

 そんな彼は今、ナバルとバトルトークを嬉しそうにしていた。


「クラーケンへの一撃、見事だったぜ」


「噂の邪竜殺し(クライドスケイス)に言われると悪くないな。ところでどうだったんだ?かの邪竜は」


「正直ヤバイ奴だったな。変身前もヤバかったけど変身後は魔の森西側に匹敵するヤバさだった」


「西側…確か『巨大な樹木の森』だったか。自分が虫か何かの小動物になった気がするとか。行ってみたいものだな」


「ここの海も危険な海域はあるんだろ?」


「ああ、東の海は『海王リヴァイアサン』の領域だからな…」


 嬉しそうに話してる二人の姿は仲の良い男女そのものなのに会話の中身は『戦闘狂たちの情報交換』にしか見えない。オレは平和主義者だから参加しないで今後の事を確認するかね。


「そういやノベルさん、オレたちはここまでの護衛って事だったけど、これからはどうすれば良い?」


「うん、基本的には僕とテリオ君で回していくからナバル君たちは自由にしてて良いよ」


 それはありがたい。じゃ明日は散策だな。ふとテリオを見ると何故か得意気な顔をしてる。


「あれ?テリオは流からいうと仕事だろ?ナンパ出来なくて凹む所じゃねぇの?」


 ちゃかし半分、疑問半分でテリオに聞いてみると「フッ」とかっこつけながらオレを見てきた。なんかムカつくな。


「所詮は小グマだな。いいか?真面目に仕事をする時の(おとこ)の横顔に、世の女性たちは惹き付けられるものなのさ」


 アホがなんか言い出した。こんな感じで上手く誘導できるのは…山賊顔(ナバル)には無理だとして…既婚者のノベルさんだろな。まあ良いさ。夢を見るのも(おとこ)だもんな (笑) 。

 オレは茶化すこと無く放置した。



 その晩、オレは風呂あがりの後にいつものブラッシングを全体にしていく。これをやらないと体の毛が固くなるんだよね。モフモフが自慢のオレとしては大切な日課なのだ。もちろんホルンにも丁寧にブラシをかけるんだが…。


「ナナイの髪はツヤツヤニャ~」


「ふふふっ、ありがと」


 ナナイと3人、ブラシのかけ合いっこになってる。そこへ部屋がノックされる。ナバルが明日の予定を決めたいって言ってたな。オレとホルンは屋台巡りがしたい。ナナイはここで売っているアイテム関連が気になるそうだ。そしてナバルは…なんとビックリ船酔いを克服したいと言い出した。…どうなることやら。


……

………


「んまそうな匂いがするニャ~!」


「昨日の魚、あるかな」


「美味しかったですものね。お婆ちゃんのお土産に良いかな」


 まずはナバルたち4人で朝の港を散策することにした。朝市ってヤツかな。通りに面して屋台が至るところに立っている。奥の方では競りもやってるみたいだな。威勢の良い声がここまで響いてくる。


「ナバルさ、昨日言ってた船酔い対策の特訓ってどうやるの?」


「それな。昨日、獣王のダンナとゼノンさんに相談したら海域の魔物の間引きに参加することが出来そうなんだよ」


 そんなことを嬉しそうに言った。いきなり実戦かよ。大丈夫か?


「初っぱなから戦闘はハード過ぎない?」


「テリオにもそう言われたけどよ、後続の船だし予備の部隊と一緒だから邪魔にならないって言われたから好意に甘えることにした」


 そんなことを嬉しそうに話すナバル。後続ってことは先頭集団のバトルを観察したいんだろうな。「お前もどうだ?」と言われたがオレは辞めといた。そんなことを話している間にもホルンとナナイは次々と色んな物を見てまわっている。


「ウマウマニャ~」


「…珊瑚ですか。初めて見ました」


 ホルンはイカ焼き?を、ナナイは珊瑚の欠片を手にしている。買いにいこうとしたナバルにオレは優しく忠告した。


「食い過ぎと酒はやめとけよ?」


「うっ!!…そうだな」


 悲惨な未来を想像したのかグッタリ項垂れるナバル。でもマジでやめた方がいいと思うんだよな。そうこうしている間に船着場についた。


「じゃあ俺はここで。ナナイたちも楽しんでこいよ」


 酒への未練を断ち切ったのかスッキリした顔で船に乗り込むナバル。「兄さんも気をつけて!」と声をかけるナナイに笑顔で手を振り船は動き出した。


「ナナイ、ここの連中は海上戦に慣れた連中だから大丈夫だよ」


 心配そうなナナイに優しく声をかけた。ホルンもナナイの腕に抱きつき「ナバルは強いニャ! きっともっと強くなるニャ!」と励ましている。


「そう…だよね」


 無理に笑顔になろうとしているナナイの顔に何とも言えない気持ちになる。その日、海は静かに牙を研いでいたのだ。







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