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勇者の相棒は森のクマさん  作者: タローラモ
第3章 獣王国へ ~ 旅上編
50/127

50 地竜乱入

「流石ナナイだな」

 俺は後ろで魔物を仕留めた妹を見た。

 対軍戦闘を得意としていて、俺よりも化け物じみてるが、それを言うといじけるので決して言ってはいけない。

まだ13才の女の子だからな。でも頼もしいのは事実だ。トランに言ったら「シスコンですか?」と呆れ顔で言われた。意味はわからんが罵倒されたのはわかる。思い出したらムカついてきたな…

 そんなことを考えてたらバカデカイうなり声とともに地竜が現れた。


「へぇ…ようやくものになりそうな素材が来たかよ」


 思わず笑みがこぼれる。そんな俺を昔トランに『その悪人フェイスはやめとけ』と失礼極まりねぇことを言われた。


 …地竜だったな。確か地竜の皮で作られた防具は軽くて丈夫なため人気があり店でも結構な値段で取引されてる。そのため素材も結構いい金額で売れたはずだ。

 よし、それで路銀も増やせて旨いもんも食える!決まりだな。

 俺は笑いをこらえながら剣を構える。


 どうやら地竜は3体も居たらしい。大漁(たいりょう)だな。

 先陣きった奴が俺に噛みつこうと襲いかかってきた。その動きに合わせ顎先を剣でそらす。


ガァン!


 やっべ、思わず殴りつけちまった。

 地竜は衝撃で白目を向いていた。コレはコレで上手くいったなぁ。そのまま延びきった首を切断する。

 あっけなく一体を処理した俺は襲いかかる2匹目に狙いを定める。が、コイツ顎に魔力崩壊のオーラを(まと)いやがった。そこらの雑魚じゃやらない芸当だ。面白れぇよ。

 俺は左手にナイフサイズの光の剣を具現化すると牽制に顔面を切りつける。

 地竜は俺の左手を見て激しく驚いたのか慌てて顔を引っ込める。…だが遅い。一瞬でも足を止めたら敗けだぜ?

 そのまま腹の下に入り込み大上段で腹を(さば)く。


『グッアァァァッ!…』


ドスン!


 これで2匹目完了だな。魔力崩壊を使えるならしっかり魔力抵抗(レジスト)もしとけよ。まあ、魔境の魔物でもない限りそこまで対策してくる奴らはそうそういないけどな。

 気をとりなおして3匹目だな。

 俺はじりじりと距離を詰め寄る。


 …あれ?コイツ…足が震えてね?

 地竜は基本、傲慢な魔物だからバカみたいに突っ込んでくる。コイツら的にはその高い身体能力で何とでもなると思ってるんだろうけど…。

 実際、森の東側では最強の部類なんだよな。それでもそれなりに腕があれば何とでもなるんだけどな。ただ出現数が少ないからわりと貴重なんだ。だから今日はツイてる!


「クックックッ…さあ、来いよ」


 何故か地竜はにじりにじりと後退してる。あれ?突っ込んで来ないなぁ…

 そう思ったのも束の間、横に走り出しやがった。はぁ!ふざけんなよ!


「待てやコラァ!!」



 谷の奥にオレタチの群れはある。その中でも一番強い長老から聞いたことがあった。谷を出て、森を抜けるとニンゲンという生き物がたくさんいるらしい。あんまり旨くない変わりに数がたくさんいるから腹はふくれると言う話を聞いた。オレタチはしゃべれないけど上位の地竜は言葉を交わせる。

 …しゃべれないだけで言葉を理解する事はできるんだぜ?

 そんな話をオレ以外にも群れ一番の乱暴者の2匹は聞いていた。ソイツらはそれじゃあ行ってみようと群れを飛び出した。

 旨くないというニンゲンには興味ないけど森の外は気になったからオレも群れを飛び出した。


 森の中には沢山の小さな獲物がいた。

リザードマンってのはあんまり旨く無かったけどオークってのは旨かった。

 ソイツらを追いかけ回してたら森を抜けちゃった。

最初に目についたのは石が高くつまれた変な山だった。その上と下にリザードマンよりも小さいのが沢山いた。これがニンゲンかぁ。

 感じる力もとても小さい。

 乱暴者の2匹は目の前にいたニンゲンに襲いかかった。

 オレはどうしようかなぁ。ボーッと考えてたらあり得ないことが起きた。なんと乱暴者の2匹があっさり殺られちまった。


は?


 目の前のニンゲンはオレに近づく。何が起きた?こんな小さなニンゲンに…

 オレはよく見た、そのニンゲンを。


 …何で気づかなかったんだろう、ソイツのちからは小さくなんて無かった。『小さく隠してた』んだ!その証拠によく見ると恐ろしいほどの力が渦巻いてるのがよくわかる。


 ヤベェ!!

 ニンゲンヤベェ!!!


 足が震えた。勝てるか?


 …無理!


 上手く逃げられるか?


 …わからない。


 オレは一目散に逃げ出した。

 …そしたらニンゲンがスゲェ顔して追いかけてきた!


「待てやコラァ!!」


 ヒイィィィ!


 目の前のオークやリザードマンを蹴散らし逃げまくった。

 何をどう間違えたのか目の前はあの石の山に向かっちまった。目の前にはニンゲンが沢山いる。


 ダメだダメだ!

 ボコボコにされてオレが食われる!

 オレは方向転換して近くの岩場に向かう。わざと土煙をたてながら。

 辺り全体が土煙でおおわれ、オレはなんとか隠れることに成功した。


 岩場に隠れて息を整える。



「どこ行きやがったトカゲ野郎!」



 コワイコワイコワイ…

 ニンゲンは辺りをキョロキョロ見てる。オレはそっと顔を出した


 あ

「あ」


 見つかったぁ!!


「いたぁ!かかって来いやぁー!!」


イヤだぁーー!


「皮おいてけぇ!!」



「なあ、お前は地竜に勝てる?」

「…バカ言うな」

「だよなぁ…じゃあ、あれはなんだ?」

「…」


 俺達は行商人の護衛をしながら旅をしている冒険者だ。

 旅の途中で襲い掛かる山賊やゴブリンなんかを相手にしている。だからそれなりに腕はたつつもりだ。

 だからこの町で起きた襲撃でも活躍できると踏んで参加したわけだが…


 オークとリザードマンの数に最初はビビった。でもこっちも俺らだけじゃないから何とかなるだろう。そんな考えを吹き飛ばす魔物が乱入しやがった。地竜だ!


 最悪なことに魔物の集団に突っ込んだ若い奴が目の前で遭遇しちまった。アイツ死んだぞ!

 全員今すぐ撤退して門を閉じるべきだ!そう叫ぶ前に地竜が狩られた。


 狩られたぁ?!


 最初に襲いかかった地竜の首を切り飛ばし2匹目の腹に入り込みかっ捌く。流れるような動きに驚きを隠せない。強いなんてもんじゃねぇぞ!凄腕じゃねぇか!

 そうこうしてるうちに3匹目が逃げ出した。


 …地竜も逃げるんだな。ソイツがこっちに来たときには流石にビビったけど俺らを見るなり方向転換して行った。地竜はスゲェ情けない顔をしていたからあの剣士と俺らが同類と思ったのかもしれない。剣士が岩場に隠れた地竜を見つけたときだった。連れの少女たち(この子たちも色々おかしい)の会話が聞こえた。


「あ」

「どうしたの?ホルンちゃん」

「あの地竜、()らしたニャ」

「…ああ」

「あの地竜、よっぽどコワイんだニャァ」


 地竜相手の会話じゃねぇ。結局、地竜は物凄い全力疾走で森に逃げ帰っていった。


「ドチクショォォォォ!!」


ゴォン!ゴォン!


 若い剣士の叫び声が合図の鐘と重なり鳴り響く。戦闘終了の合図だ。

 他の魔物も狩り終わったようだった。剣士は地団駄を踏んでいる。なんだかなぁ…。








ここまで読んでくださりありがとうございました。

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